講演情報
[I-P02-3-07]血管輪における胎児診断のポイントおよび出生後経過の検討
○奥村 亜純1, 真川 祥一1, 鳥谷部 邦明1, 大橋 啓之2, 澤田 博文2, 三谷 義英2 (1.三重大学 産婦人科, 2.三重大学 小児循環器科)
キーワード:
血管輪、胎児診断、先天性心疾患
【背景】血管輪は、大血管の発生異常により気管や食道を圧迫し、出生直後から呼吸器症状や消化器症状をきたしうるため、胎児診断が重要であるが、大血管の走行や気管との位置関係を正確に描出する必要があり、胎児診断は容易でない。今回、胎児心エコー基本断面の4 chamber view(4CV)、3 vessel view(3VV)、3 vessel trachea view(3VTV)における血管輪の胎児エコー所見および出生後経過を検討した。【方法】胎児診断した自験例10例の血管輪を対象とした。重複大動脈弓(DAA)4例、右側大動脈弓(RAA)6例であった。評価項目は、4CVは下行大動脈(dAo)の位置異常(脊柱の右側ないし正中)、3VVは肺動脈(PA)とAoの広い間隙、3VTVはU sign(RAAと左動脈管弓でU字状に気管を取り囲む)または9 sign(DAAと左動脈管弓で9字状に気管を取り囲む)とした。気管圧排所見は、3VTVにおいて気管腔ないし気管周囲のspaceが十分でないことを陽性所見とした。その他、出生後との診断の乖離、および出生後経過を検討した。【結果】対象10例のうち、4CVでdAoの位置異常を認めたのは9例(90%)、3VVでPAとAoの広い間隙を認めたのは9例(90%)で、血管輪の間接的所見ではあるが高率に認めた。3VTVにおいて、RAAでU sign、DAAで9 signの所見はそれぞれ6例(100%)、4例(100%)と全例で認めた。3VTVで胎児期に気管圧排所見を認めたのは0例(0%)であった。出生後との診断の乖離は0例(0%)であった。出生後経過に関して、症状出現は1例(10%)で、DAA症例で努力呼吸を認めた。手術を施行したのは3例(30%)で、いずれもDAA症例であった。10例(100%)とも合併症なく生存している。【結論】右大動脈弓+左動脈管/重複大動脈による血管輪は、4CVにおけるdAoの位置、3VVにおけるPAとAoの間隙を測定することにより、血管輪の間接所見として胎児期にスクリーニングできることが示唆された。一方で、胎児期に気管圧排を推定し、出生後の症状出現を正確に予測することは難しい。