講演情報

[I-P02-4-06]肺高血圧を合併したmitochondrial encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes (MELAS)の1例

金井 美貴, 水流 宏文, 小貫 孝則, 馬場 恵史, 塚田 正範, 阿部 忠朗, 沼野 藤人 (新潟大学 医学部 小児科)
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キーワード:

ミトコンドリア、MELAS、肺高血圧

【緒言】ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能不全により全身臓器に症状を呈する。心合併症として心筋症、刺激伝導系障害が知られおり、肺高血圧の合併例は稀である。今回、肺高血圧を呈したm.3243A>G変異のmitochondrial encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes(以下MELAS)孤発例を経験したので報告する。【症例】3歳女児。正期産で出生、発達遅滞、発育不良、基礎疾患を認めることなく経過していた。2歳時、RSウイルス肺炎で入院した際、尿細管性アシドーシス、高乳酸血症、巨赤芽球性貧血、肺高血圧を認めた。肺炎改善後も心エコーで肺高血圧所見が残存したため、3歳時に心臓カテーテル検査を施行し、平均肺動脈圧31mmHg、平均肺動脈楔入圧7mmHg、肺血管抵抗3.2WU・m2、CI 6.6L/min/m2であった。心エコーで心筋症を疑う所見はなく心構築は正常であった。心電図、CT、肺血流シンチグラフィーに異常所見は認めなかった。IPAHの診断で在宅酸素療法、タダラフィル、マシテンタンを導入した。その後、遺伝子検査でm.3243A>G変異(血液での変異率88.8%)が同定され、タウリンとアルギニンを追加した。母は同変異が同定されず、孤発例と判断した。3歳1ヵ月時、脳卒中様発作を呈し、ビタミンカクテルを追加した。現在、外来で経過観察中である。【考察】MELASは脳卒中様発作、高乳酸血症を特徴とし、80%がtRNAのタウリン修飾に関連するm.3243A>G変異を有するとされ、同変異は母系遺伝が一般的である。本例は肺高血圧、高乳酸血症等が先行し、遺伝子検査判明後に脳卒中様発作を呈した。ミトコンドリア病における肺高血圧の機序や治療は十分に解明されていないが、NO産生障害や微小血管障害の関与が考えられており、アルギニンやビタミンカクテルの有効例が報告されている。本例は高心拍出を伴う肺高血圧で、IPAHとは異なる臨床経過をたどる可能性があり、注意深い観察が必要であると考える。