講演情報
[I-P02-5-01]ABCC9新規変異を含むCantu症候群2例におけるATP感受性Kチャネル病としての心血管病変の表現型
○齋藤 和由, 浅井 ゆみこ, 小島 有紗, 内田 英利, 畑 忠善, 吉川 哲史 (藤田医科大学 医学部 小児科)
キーワード:
Cantu症候群、心筋症、ABCC9
【背景】ATP感受性Kチャネル(KATP)はチャネル孔構成タンパクKir6.1とその制御タンパクであるスルホニル尿素受容体SUR2の各4量体が会合したヘテロオクタマーからなり、細胞内代謝に伴うATP濃度を電気的活動へ結び付けるユニークな機能を有し、膵島β細胞、筋細胞、神経細胞など様々な電気的興奮細胞に発現している。近年、Kir6.1をコードするKCNJ8あるいはSUR2をコードするABCC9の機能獲得性変異がCantu症候群(CS)の原因であることが判明した。CSは、世界的に約150症例のみ報告されている稀な遺伝性多臓器疾患で、過成長、毛髪過剰、骨リモデリング異常、心血管異常を特徴とするが、心血管系異常の表現型は心筋症、PDA、動脈瘤、心嚢液貯留など多彩であるが詳細は不明である。今回新規ABCC9変異を含む2例の遺伝子型と表現型に関して報告する。【症例1】6歳女児。胎児心エコーにて過成長の指摘があり、出生時4.5kgの巨大児であった。心疾患に関しては、心拡大、PDAと診断された。PDAはインダシン投与に抵抗性で結紮術を施行した。毛髪が異常に濃く、過成長が見られ、骨変化、てんかん、軽度発達遅滞を認めている。心エコー上、心室形態は心肥大、肉柱過形成を認め、HCMタイプのLVNCと診断した。既報のABCC9 variant(p. A1116H in TMD2)を認めた。【症例2】10歳男児。胎児エコーでは異常を指摘されなかったが、在胎35週0日、出生体重3034g(+2SD)のLFD児であった。日齢14日でPDAに伴う高肺血流性心不全となり、利尿剤開始した。インダシン治療反応性で以後の経過は良好であったが、心拡大は継続している。心エコー上、DCMと診断した。新規のABCC9 variant(p. P1146S in TMD2)を認めた。【考察・結語】CSにおけるABCC9変異はほぼ膜貫通ドメイン(TMD)に存在し、SUR2の転写を阻害する。本2症例の変異も同部位に存在し、変異部位による表現型の異同に関しては今後の更なる症例の蓄積と病態の解明が待たれる。