講演情報

[I-P02-5-02]胎児腹水を契機に診断に至った家族性MYH7遺伝子変異を伴うdysplastic tricuspid valve, left ventricular non-compactionの1例

稲瀬 広樹, 田中 敏克, 渡邊 望, 伊藤 啓太, 飯田 智恵, 中井 亮佑, 久保 慎吾, 三木 康暢, 亀井 直哉, 小川 禎治, 城戸 佐知子 (兵庫県立こども病院)
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キーワード:

MYH7遺伝子変異、左室緻密化障害、エブスタイン奇形

【背景】MYH7遺伝子は肥大型心筋症をはじめとする心筋症の原因遺伝子として知られている.その中でも,近年エブスタイン奇形と左室緻密化障害を合併する例にMYH7遺伝子変異を認める報告が散見される.【症例】母体27歳,2妊0産,妊娠15週で自然流産歴あり,心室中隔欠損症に対して手術歴あり.妊娠25週で胎児腹水を認めたため当院紹介となった.初診時CTAR:0.59と著明な心拡大があり,両心室の収縮低下と重度の三尖弁逆流(TR),肺動脈弁狭窄(PS)を認めた.順行性の肺血流はほとんどなく,生後は動脈管依存性になる可能性も考えられた.在胎32週3日,出生体重:1666g,胎児機能不全のため緊急帝王切開で出生.出生後の心エコーでも異形成による重度のTRと心室壁の粗い肉柱形成を伴う心機能低下を認めたが,心房間は左右シャントで,順行性の肺血流で酸素化を維持することができた.カテコラミンやミルリノンによる心サポートを日齢60まで要したが,心機能のさらなる悪化はなく,生後3カ月で自宅退院した.後日,全エクソン解析でMYH7遺伝子にスプライシングドナーバリアントをヘテロ接合性に認め,母にも同様のバリアントを認めたことから家族性MYH7関連心筋症と診断した.【考察】本症例ではplasteringはほとんどないものの,異形成を伴う重度の三尖弁逆流を認めておりエブスタイン類縁疾患と考えられた. エブスタイン奇形と左室緻密化障害を合併する症例のうち,乳児期までに診断される例は重症心不全,突然死のリスク因子で予後不良とされており,本症例は1歳になる現在まで心機能の悪化なく経過しているが,今後も慎重なフォローが必要である.また, MYH7遺伝子変異は常染色体顕性遺伝形式をとるため,遺伝カウンセリングの重要性も特に大きく,エブスタイン奇形を合併する左室緻密化障害をみた際には積極的に遺伝子検査を考慮すべきである.