講演情報

[I-P02-5-05]心筋生検で炎症細胞浸潤を認めた拡張型心筋症の小児例

板橋 立紀, 鈴木 祐人, 佐々木 大輔, 永井 礼子, 山澤 弘州, 武田 充人 (北海道大学病院 小児科)
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キーワード:

拡張型心筋症、炎症性拡張型心筋症、心筋生検

【背景】拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy: DCM)の診断には必ずしも心筋生検を必要としない一方で、DCMの病因に炎症が関与している例があることが明らかになりつつある。持続的な心筋の炎症細胞浸潤を認めるが、心筋細胞傷害を伴わないものは炎症性拡張型心筋症(inflammatory dilated cardiomyopathy: iDCM)と分類され、小児での報告は少ない。【症例】生来健康な12歳女児。X月、胃腸炎症状で小児科に入院した。心臓超音波検査で左室拡張末期径の拡大、左室駆出率18%と収縮能低下を認めた。DCMによる心不全の増悪と判断し心不全治療を開始したが、持続性心室頻拍による循環破綻を来たし経皮的補助循環が導入された。X+1月、心臓移植の必要性が考慮され、小児移植実施施設へ搬送となった。補助人工心臓(ventricular assist device : VAD)導入時の心筋生検でDCMに矛盾しない所見を認めたが、心筋細胞傷害を伴わない炎症細胞浸潤が確認されたため、iDCMと判断した。VADによる心負荷軽減とステロイド投与により、左室駆出率は45%まで回復した。X+4月、補助人工心臓を離脱できX+6月に自宅退院となった。外来フォロー中にCRPが陰性化せず経過しており、発症5年後に心筋生検を行ったところ炎症細胞浸潤が残存していた。【考察】本症例は病初期からDCMの形態を呈し、心筋生検で持続的な炎症細胞浸潤を確認したことからiDCMと判断した。iDCMでは早期の免疫抑制療法により心機能が改善する報告がある。本症例でもVADによる心負荷軽減に加え、免疫抑制療法により心機能が回復した可能性があると考えられた。しかし発症5年後の心筋生検でも炎症細胞浸潤が確認され、今後再度の心機能低下に関与する可能性が考えられた。【結論】心筋生検によりiDCMと判断した小児例を経験した。DCMは病因に基づく追加治療の可能性があり、心筋生検も考慮される。