講演情報

[I-P02-5-06]心臓MRI検査の所見から学校生活管理区分と治療を決定した濃厚な家族歴を有するミトコンドリア心筋症の男児例

原口 優海, 長田 洋資, 中野 茉莉恵, 松永 綾子, 麻生 健太郎 (聖マリアンナ医科大学 小児科)
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キーワード:

ミトコンドリア心筋症、心臓MRI、T1 mapping

【症例】生来健康であった9歳男児。母親はミトコンドリア病と診断されており、14歳の兄は中学校1年生時の学校心臓検診で心電図異常を指摘され、精査の結果、左室全周性の心筋肥厚が確認された。その後の遺伝子検査により、ミトコンドリア合成タンパクをコードするDNAに遺伝子異常が認められた。本症例においても遺伝子検査を実施したところ、兄と同一の遺伝子変異(m.3256C>T, MT-TL1, Heteroplasmy 47.4%)が確認された。胸部X線検査ではCTRは50%であり、肺血管陰影に異常は認められなかった。12誘導心電図では、心拍数120、軽度の右軸偏位(QRS軸+120度)、V1-4誘導での陰性T波、小さなデルタ波が確認された。心エコー検査のパラメータとして、LVEF 69%、%FS 38.2%、E/e’ 10.6、LV Global Strain 24.1%が示され、左室壁運動は良好で、左房圧の上昇を示唆する所見や弁膜症は認められなかった。心臓MRI検査のCine MRIでは壁運動に異常は認められなかったものの、遅延造影で心筋の信号が不均一であり、T1マッピングではNative T1が上昇した部分が確認され、ECVもびまん性に高値を示していた。本人に自覚症状はなかったが、心臓MRI検査の所見から心筋障害が既に存在していると判断され、学校生活管理区分Dとし、βブロッカーの内服を開始した。【考案】汎用される心エコー検査のみに基づいて判定した場合、本症例は学校生活管理区分Eとされ、内服治療なしで管理されていた可能性が高いと考えられる。しかし、心臓MRI検査の所見から生活管理区分を決定したことには異論があるかもしれないものの、心臓MRIは他のモダリティでは見逃されがちな心筋異常の早期発見に役立つことが示唆される。