講演情報
[I-P02-5-07]拡大マススクリーニング検査による国内初の発見例であり、心機能低下のため造血幹細胞移植の適応に難渋したHurler症候群の1例
○佐藤 有美, 松田 晋一 (東海大学医学部 小児科)
キーワード:
ムコ多糖症、拡大マススクリーニング、造血幹細胞移植
【背景】現在我が国でも拡大マススクリーニングの対象疾患が増え、発症前に診断される症例が増加している。今回、国内で初めて拡大マススクリーニング検査によりHurler症候群(ムコ多糖症1型)と診断されたが、心機能悪化のため、造血幹細胞移植の適応に難渋した症例を経験した。今後、同様に早期発見される例が増加すると考えられ、治療方針の確立が急務であると考えられたため、報告する。【症例】生後1.5ヶ月時に、拡大マススクリーニング検査を契機に、遺伝子検査にてHurler症候群と診断された。生後2.5ヶ月より心機能の低下を認め、生後3ヶ月より酵素補充療法が開始された。生後6ヶ月時に、他院にて造血幹細胞移植が予定されたが、心機能悪化のために中止となった。以後も、心機能が低下した本例に対する移植可能施設が見つからず、最終的に8施設目の当院で移植の方針となり、生後1歳3ヶ月で臍帯血移植を施行した。心臓超音波検査でのEFは、酵素補充療法により16%から44%まで改善していたが、移植後は58%まで改善した。移植前処置・移植後の心機能の悪化は認めなかった。【考察】本疾患においては、酵素補充療法は血液脳関門を通過しないため、2歳までの造血幹細胞移植が望ましいとされている。一方心機能低下例では、酵素補充療法により心機能を改善させてからの造血幹細胞移植が望ましいとされ、症例毎の適切な移植時期の検討が望ましい。また、代謝疾患に対する造血幹細胞移植が可能であり、かつ心機能悪化時にECMO等の対応が可能な施設は多くはなく、施設間での連携が必要と考えられた。【結語】今後、拡大マススクリーニングの普及により、本例のような早期診断例は増加することが予測される。血液・代謝・循環器・心臓外科等、関連各科や施設間での連携が必要な疾患であり、治療方針の確立に加え、診療体制の整備が望まれる。