講演情報

[I-P02-5-09]敗血症性ショック後に心筋石灰化をきたした症例の画像解析

高橋 雅子, 高村 一成, 兒玉 祥彦 (宮崎大学 医学部 小児科)
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キーワード:

心筋石灰化、心臓MR、ストレイン

【背景】心筋石灰化は心筋に過剰なカルシウムが沈着する稀な病態であり、特に小児例での報告は限られている。敗血症性ショックに伴う心筋虚血により広範囲の心筋石灰化をきたした10歳男児例を経験したので各種画像解析とともに報告する。【症例】10歳男児。8歳で芽球増加を伴う骨髄異形成症候群を発症し2回の造血幹細胞移植を施行。経過中に敗血症性ショック、移植片対宿主病、右足趾壊死など多数の合併症をきたしたが回復した。しかしその後のCTで脾臓、全身骨格筋、心筋に広範囲の石灰化が判明し、左室内膜側特に中隔側や前壁に石灰化が強かった。多源性VPCが頻発しており、カルベジロールとソタロールである程度の寛解を得た。心エコー図では左室内膜下心筋に高輝度エリアが散在していたが左室駆出率(LVEF)は57.9%と保たれていた。心エコー図での左室心筋層別ストレイン解析では心内膜下のglobal longitudinal strain (GLS) -15.6%、中層のGLS -13.1%であり、既報のGLS基準値と比較して低値であった。心臓MRではCTで石灰化と思われる部分はT1/T2 black bloodで低信号であった。また中隔心基部~中部の内膜下に線状のLGEを認め、その辺縁は低信号域であった。T1 mappingではnative T1低値でECVは高値であった。【考察】GLSが左室心内膜下、左室心筋中層いずれにおいても低値であったことは、敗血性症ショック時に左室心筋全層の虚血からの回復後に石灰置換されたと思われる内膜側のみならず、石灰化の乏しい中層にも心筋線維化が残存していることが示唆された。心臓MRでのnative T1低値は、成人例で既報のnative T1高値とは相反する結果であったが、微小な石灰化と線維化の混在を反映していることが考えられた。【結論】敗血症性ショック後の心筋石灰化症例では、LVEFは維持されている場合も、広範な心筋障害が残存している可能性がある。慢性期の左室機能には注意が必要と考えられる。