講演情報
[I-P02-5-10]当院における筋ジストロフィーの心筋障害に対する治療介入時期の検討
○中村 蓉子, 渡部 誠一, 渡邉 友博, 高井 詩織, 大鹿 美咲 (総合病院土浦協同病院 小児科)
キーワード:
筋ジストロフィー、Duchenne型、ACE-I
【背景】筋ジストロフィー(以下MD)は骨格筋線維の壊死,再生を主病変とした進行性の筋力低下を認める疾患である.分類はDuchenne型,Becker型,肢体型,顔面肩甲上腕型,福山型があり,主症状は運動機能低下である.しかし,型によっては心筋障害による心機能低下や致死的不整脈をまねくが,症状出現がわかりにくいため治療介入開始の判断が難しいという課題がある.【目的】当院で現在診療しているMDの臨床経過から治療法を後方視的に検討する.【方法】2011年12月から2024年12月まで当科で診療したDuchenne型6例,Becker型1例,筋強直型2例,顔面肩甲上腕型1例,福山型1例について,心機能,治療介入を調査した.【結果】Duchenne型の診断年齢は2か月から4歳で,全例で5歳時からプレドニゾロン(以下PSL)の投与を開始し,全例で呼吸器の装着はなく,4例は自立歩行可能であった.6例中3例(うち2例が自立歩行可能)でエナラプリルマレイン酸塩(以下ACE-I)を導入しており,導入時の平均年齢は10歳で,左室駆出率(以下LVEF)はいずれも60%を下回っていた.LVEFが維持されていても,拡張能のE/e’は8-10mmHg以上とやや高く,その他のMDでは見られない軽度の拡張障害の所見を認めた. 筋強直型は1例でQT延長と上室性頻拍の所見を認めたが,失神等の症状なく経過している.Becker型,顔面肩甲上腕型,福山型では特記すべき異常所見は認めなかった.【考察】Duchenne型ではPSL導入に伴い歩行可能期間が延長している一方,心筋障害についてはLVEF:55%以下でのACE-Iの導入が推奨されているが良好な心機能維持のための確立された治療はない.また,筋強直型では10-30%に致死的不整脈という問題点があり,心筋障害に対しての治療介入時期について文献的考察を踏まえて報告する