講演情報
[I-P03-1-04]抗うつ薬開始後に意識障害を生じたQT延長症候群2型の1例
○吉田 朱里, 宗内 淳, 峰松 優季, 田中 惇史, 峰松 伸弥, 池田 正樹, 豊村 大亮, 清水 大輔, 杉谷 雄一郎, 渡邉 まみ江 (JCHO九州病院 小児科)
キーワード:
QT延長症候群、Torsades de pointes、抗うつ薬
【背景】薬剤性QT延長症候群(LQT)は抗不整脈薬、向精神薬、抗菌薬等により生じるため、境界領域QT延長を呈する症例へのそれらの薬剤投与は注意が必要である。【症例】17歳女性。中学学校心臓検診で無症候性LQTと僧帽弁逆流症を指摘され当科受診した。初診時心拍数63bpm、QTc(Bazett/Fridericia)=0.500/0.482secで、家族歴はなかった。運動負荷4分後QTc(B/F)=0.469/0.439secと延長なく、疑診例(Schwartz診断基準3点)で定期経過観察とした。高校生となり食欲低下、体重減少、夜間覚醒のため近医精神科クリニックでうつ病と診断され、4か月前からセルトラリン塩酸塩(SSRI)の内服を開始された。2か月前の当科定期受診時はQTc(B/F)=0.479/0.475secであり経過観察とした。しかし抗うつ薬の効果が不十分とされ、1か月前からベンラファキシン(SNRI)とミルタザピン(NaSSA)の内服に変更された。LQTに関しては家族も医療機関に伝えていた。入院当日、深夜に母が布団を着せようとしたところ四肢の硬直と浅呼吸に気づき、呼びかけても視線が合わず救急要請した。救急隊到着時は洞調律であった。搬送中より不穏状態で暴れるようになり、来院後ルート確保し鎮静した。心拍数87bpm、QTc(B/F)=0.598/0.564secと延長しており、血液検査や頭部CT/MRI・脳波検査で異常はなかった。入院後のモニター心電図では著しい徐脈、期外収縮や交互性T波は認めなかった。メランコリー型うつ病でなく薬物治療効果は限定的であるため抗うつ薬は内服中止とし、その3日後にはQTc(B/F)=0.522/0.518secとなった。遺伝子検査でKCNH2 c.916G>Aの変異を認め、LQT2と診断した。ナドロール内服継続で退院し、3か月後には心拍数64bpm、QTc(B/F)=0.463/0.458secまで改善した。【考察】境界領域QT延長を呈する症例への安易な向精神薬や抗菌薬投与を行わないよう患者・医療者へ啓蒙してゆくことが重要である。