講演情報
[I-P03-1-05]学校心臓検診におけるQT延長例の遺伝学的解析と診断の課題
○高瀬 隆太, 山川 祐輝, 清松 光貴, 鍵山 慶之, 寺町 陽三, 渡邊 順子, 須田 憲治 (久留米大学 医学部 小児科学講座)
キーワード:
QT延長症候群、学校心臓検診、遺伝学的検査
【背景】先天性QT延長症候群(LQTS)に関連する遺伝子は15種類以上同定されており、特にKCNQ1, KCNH2, SCN5Aの変異が主要因とされる。2018年より遺伝学的検査が広く利用可能となり、個別化医療の進展が期待される一方、臨床的意義が不明な変異(VUS)の存在により、検査結果の解釈や管理・治療方針の決定には課題が残る。【対象・方法】2020年1月~2024年12月に当院で遺伝学的検査を含む診断・治療を受けたLQTS患者を対象とし、その遺伝学的検査結果を含む臨床情報を後方視的に検討した。【結果】対象期間に学校心臓検診でQT延長を指摘され受診した症例は40例であり、そのうち18例(45.0%)が遺伝学的検査を受けていた。最終的に家族検索等での成人例を含め計35例が遺伝学的検査を受けていた。遺伝子変異は23例(65.7%)で認め、12例では変異は同定できなかった。KCNQ1は19例、SCN5Aは12例で変異が同定され、最大で5つの変異が重複していた。病的変異と評価されたのはKCNQ1で2例、SCN5Aで6例のみであり、VUSはKCNQ1で4例、SCN5Aで3例に認められた。学校心臓検診を契機とした40例中、遺伝学的に診断に至ったのは4例(10.0%)のみであった。小児例では致死性不整脈は認めなかった。【考察】学校心臓検診でQT延長を指摘された症例のうち、遺伝学的に確定診断に至ったのは10%にとどまり、VUSの解釈を含め診断困難例での治療戦略が課題であった。小児例では心イベントは認められなかったが、診断の困難さ、リスク評価、適切なフォローアップ基準等の課題は、学校心臓検診でのスクリーニング精度と遺伝学的検査の限界の両面からの問題と考えられた。【結論】学校心臓検診におけるQT延長例の診断には遺伝学的検査が有用であるものの、VUSの解釈を含め課題が残る。スクリーニング精度向上のためには、遺伝学的背景のみならず、フォローアップデータを含む長期的な臨床情報の蓄積が必要であり、データベースの構築が求められる。