講演情報
[I-P03-1-07]胎児期から経胎盤的抗不整脈薬投与を開始し、出生後にイバブラジンを含む多剤併用療法を要した異所性心房頻拍の1例
○本間 友佳子1, 早渕 康信1, 吉田 あつ子2, 加地 剛2 (1.徳島大学病院 小児科, 2.徳島大学病院 産科婦人科)
キーワード:
イバブラジン、異所性心房頻拍、経胎盤的不整脈薬治療
【背景】胎児不整脈は胎児心不全や胎児水腫の原因となり、胎児・新生児死亡の危険性がある。今回我々は、胎児期から頻脈を来し、出生後も多剤抗不整脈薬に治療抵抗性を示した異所性心房頻拍の1例を経験した。イバブラジンは心拍数を減少させる機序を有した新しい抗心不全薬である。新生児や小児に対する使用や不整脈に対する適応は未だ認められていないが、今回、院内倫理委員会の承認を得て異所性心房頻拍の治療に用いた。【症例】在胎14週、女児。胎児頻脈(230bpm)を認め、上室性頻拍(Long VA)と診断された。在胎17週に入院管理下で母親にソタロールの内服を開始し、220mg/dayまで増量したところ胎児心拍150bpmと改善した。母親は軽度QT延長を認め、ソタロールの内服量を調整されるなど慎重に管理された。在胎36週よりソタロールは漸減され、在胎38週0日に内服終了し、選択的帝王切開術で出生した。出生後、無投薬で経過観察したところ日齢4に200bpmの頻脈を認め、自動能亢進による異所性心房頻拍(EAT)と診断した。インデラル(3mg/kg/day)の内服を開始し、日齢8よりソタロール(70mg/m2/day)の内服を追加し、100mg/m2/dayまで漸増した。日齢15よりフレカイニド(100mg/m2/day)の内服を追加したが、その後も入眠時でも160bpm以上であることから改善が得られていないと判断し、日齢21よりフレカイニドを中止しイバブラジン(0.1mg/kg/day)の内服を開始した。脈拍を慎重にモニタリングしながら0.3mg/kg/dayまで増量したところ、徐々に頻脈改善が得られた。以降、順調に外来で経過観察している。【結語】胎児期にはソタロールの経胎盤的投与が有効であったが、出生後には充分な効果が得られなかった。新生児期EATにもイバブラジンは有用であることが示された。今後も心房頻拍の再燃や頻脈誘発性心筋症への移行に十分に注意が必要である。