講演情報
[I-P03-1-08]頻脈誘発性心筋症を発症した先天性接合部異所性頻拍の乳児に対してイバブラジンを含む多剤併用療法が有効であった1例
○石川 和1,2, 浦田 晋2, 酒井 瞭2, 藪崎 将2, 浅井 ゆみこ2, 金 基成2, 三崎 泰志2, 小野 博2 (1.国立成育医療研究センター教育研修センター, 2.国立成育医療研究センター循環器科)
キーワード:
先天性接合部異所性頻拍、頻脈誘発性心筋症、イバブラジン
【背景】先天性接合部異所性頻拍(CJET)は、心臓手術歴のない乳児に発症するまれな不整脈である。今回、乳児期に頻脈誘発性心筋症(TIC)を発症したCJETに対し未承認新規医薬品等使用評価委員会の承認を得て、イバブラジンを含む併用療法を行った一例を報告する。【症例】周産期歴に異常のない日齢32の男児が、顔色不良および呼吸窮迫を主訴に受診した。心拍数は280回/分、毛細血管再灌流時間4秒、左室駆出率 (LVEF) は10%以下であり、TICと診断した。アデノシン投与および同期カルディオバージョンを行ったが頻脈は停止せず、循環不全に対してVA-ECMOを開始した。ECMO開始後、心拍数190回/分で幅の狭いQRS波形と房室解離の心電図所見からCJETと診断した。ランジオロール、アミオダロン、リドカインの併用では徐拍化が得られなかった。プロカインアミドの併用で接合部調律の心拍数は150/分まで低下したが、洞調律には復帰しなかった。LVEFは40%まで改善したため、入院10日目にVA-ECMOを離脱した。フレカイニド、ソタロール、ビソプロロールを順次導入し内服薬への移行を目指したが、200回/分の間欠的なCJETを認めたため、入院42日目にイバブラジン(0.1 mg/kg/日)を開始すると翌日に心拍数が150回/分まで低下し、ランジオロールを中止した。入院45日目に覚醒時の間欠的な200/分以上のCJETが再燃したが、プロプラノロールを併用し、イバブラジンを0.4 mg/kg/日まで増量することでCJETは鎮静化した。入院70日目のホルター心電図では70%が接合部調律で平均心拍数は140回/分であったが、200回/分以上の頻拍は認めず、LVEFは 50%に回復したため退院し、現在まで再入院なく経過している。【結論】CJETに対しイバブラジンは徐拍化に有用である。