講演情報

[I-P03-1-09]複雑心奇形患者におけるフレカイニドの心機能への影響

連 翔太, 倉岡 彩子, 佐川 浩一 (福岡市立こども病院)
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キーワード:

抗不整脈薬、フレカイニド、単心室

【背景】フレカイニド(Flc)は小児で保険適応のある数少ない抗不整脈薬(AD)で, 広範囲の不整脈に使用される.1989年のCAST試験の結果から, 成人ではその心抑制作用などから器質的心疾患のある患者には使用は推奨されない.一方, 小児では成人と異なり, Flcは器質的心疾患のある患者においても死亡率を下げない報告がある.しかし症例毎の心機能抑制については詳細な解析結果はなく, 特に小児の器質的心疾患の最たる単心室(SV)患者についての心機能抑制効果は明らかではない.【方法】2013年から2024年にFlcを使用した患者のうち, 陽性変力作用のある薬剤を併用した症例とFlc開始後の心機能評価が行われていなかった症例を除く, SV 10例を後方視的に解析した.評価項目は, 開始前, 開始後, 中止後の主たる心室腔のFAC, PQ間隔, QRS間隔. 3群間の解析方法は, Friedman検定を用い, 有意水準は0.05未満とした.【結果】女児3例(30%), 右室型SV4例(40%), Flc使用時年齢(以下, 中央値[IQR]) 2.2(1.0-37.8)ヶ月, 体重3.2(2.6-8.4)kg.不整脈診断は心房頻拍7例, 心室頻拍1例, 接合部頻拍2例.Flc開始時併用ADはβ遮断薬6例, プロカインアミド4例.7例が術後急性期の術後23(14-31)日目に開始し, 最大用量は10.0(7.5-22.0)mg, 3(2-4)mg/kg/日, 50.0(31.3-57.0)mg/BSA/日, 投与継続日数は65(15-1587)日であった.(以下, Flc開始前, 開始後, 中止後, p値)FAC 57.6(42.0-73.0)%, 58.9(44.8-71.8)%, 59.5(47.0-76.5)%, p=0.60, PQ間隔 110(104-121)ms, 114(104-149)ms, 115(104-141)ms, p=0.48, QRS間隔86(76-102)ms, 88(76-108)ms, 86(76-109)ms, p=0.62.Flcが不整脈治療に有効であったのは7例(70%), 副作用で中止を要した症例はなかった.【結論】本検討ではSVへのFlcはFAC, PQ間隔, QRS間隔において統計学的有意な影響は認めなかった.標準的なFlc使用量においては, 小児のSV患者でも心機能を抑制することなく安全に使用できる可能性がある.