講演情報
[I-P03-2-04]川崎病の初期診断における冠動脈壁エコー輝度が与える影響
○山下 尚人, 入佐 浩史, 井福 俊允 (宮崎県立宮崎病院 小児科)
キーワード:
川崎病、冠動脈、心エコー検査
【背景】川崎病(KD)急性期には冠動脈壁のエコー輝度増強がみられるが、特異度は低く、主観による影響も否定できないため診断価値は疑問視されている。本研究では冠動脈近位部(#1や#5)だけでなく、末梢側(#3、#6-7)のエコー輝度を定量的に評価し、KD診断の補助的価値を検討した。【方法】2021年4月~2023年3月に当院でKDが疑われ経胸壁心エコー検査を受けた連続118例を対象とした(同院倫理員会承認番号23-53)。経胸壁心エコー検査で冠動脈径測定のために記録された2D画像(#1、#3、#5、#6-7)を抽出し、オフラインで後方視的に解析した。動脈壁をマーキングし、0~255のグレースケールを用いて平均ピクセル値を算出した。輝度を調整するため、隣接する心腔内血液プールで補正を行った。KD群と発熱疾患群に分けて、Mann-Whitney U testによる統計解析を行った。【結果】対象の年齢は11.0~47.8ヵ月で、KD群87例(うち不全型KD 18例)と発熱群22例に分けられた。心エコー検査時に解熱していたKD3例、治療開始前にエコー画像が記録されていなかった6例は除外した。KD群は発熱疾患群より冠動脈壁のエコー輝度が高い傾向にあったが、近位部の平均ピクセル値に有意差はなかった(#1: 148 vs. 161, p=0.34、#5: 129 vs. 116, p=0.34)。一方、より遠位部ではKD群が有意に高値を示した(#3: 139 vs. 121, p=0.0049、#6-7: 136 vs. 111, p=0.011)。【考察】発熱疾患でも冠動脈の輝度増強はみられるが、KD急性期には冠動脈全体に炎症が進行するため、近位部よりも末梢側でエコー輝度増強に差が生じる可能性が示唆された。【結論】冠動脈近位部だけでなく末梢側までエコー輝度を評価することは、KDの初期診断に有用である。