講演情報

[I-P03-2-08]当院における近年の川崎病急性期追加治療が与える冠動脈病変抑制へのインパクト

犬飼 幸子, 山碕 涼太 (日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 小児科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

川崎病、不応予測、冠動脈病変

【背景】 日本の川崎病急性期治療ガイドライン2020年改訂版ではIVIG初回治療不応例に対する2nd line以後の治療としてIFX, CsAなど多彩な選択肢が示されている.
【目的】 早期かつ多彩になった追加治療が与える冠動脈病変抑制へのインパクトを, 同時代内かつ初期治療を統一して, 治療開始時の重症予測例と軽症予測例で比較し確かめること.
【方法】 2017/4/1~2023/12/31に当院で初期治療として一律IVIG+ASA治療を行った川崎病症例をIVIG不応予測小林スコア5点以上の重症予測S群と4点以下の軽症予測M群に分けて冠動脈病変(CAL)の発生について後方視的に比較検討を行った.
【結果】全458症例のうちS群182例(39.7%), M群276例(60.3%)であった. 不全型はS群の5.5%, M群の9.8%を占め, 治療開始病日はS群中央値4病日(IQR 3-4), M群5病日(4-6)であった. 追加治療はS群104例57.1%(IVIG100%, IFX17.3%, CsA17.3%, PE5.8%), M群66例23.9%(IVIG100%, IFX9.1%, CsA10.6%, PE0%)であった. S群はM群に比し入院日数が長かった(中央値8日間(7-10) vs 6日間(5-8)). 入院中のCALはZ score 5-10がS群2.2%, M群0%で有意差を認め, Z score 2.5-5はS群7.7%, M群5.1%で有意差はみられなかった. 発症1ヶ月後のZ score 5-10はS群1.1%, M群0%, Z score 2.5-5はS群2.2%, M群0.7%, 1年後Z score 5-10はともに0%, Z score2.5-5はS群0.5%, M群0%で有意差はみられなかった.
【考察】初回治療をIVIG+ASAに統一しても, 2nd line以後の治療の選択肢が広がったためか重症予測例でも長期的な冠動脈病変に有意差は認めなかった. 但し重症予測例では入院中の冠動脈病変の出現率やPEなどの追加治療に有意差がみられた. これらが成人期に及ぼす影響を危惧し2024年以降はIVIG不応予測例に対してIVIGとCsAの初期併用を行なっている. 今後は当院で2024年を境にして比較し, IVIGとCsAの初期併用の有効性について現実世界での検討を行いたい.