講演情報

[I-P03-3-01]18トリソミー、両大血管右室起始、高度房室ブロックに対してペースメーカ植え込み術を施行し、QOLの改善が得られた9歳女児例

小原 雅仁1, 齋藤 和由2, 小西 彩加2, 浅井 ゆみこ2, 小島 有紗2, 内田 英利2, 畑 忠善2, 吉川 哲史2, 芳本 潤3 (1.藤田医科大学 医学部, 2.藤田医科大学 医学部 小児科, 3.静岡県立こども病院 不整脈内科)
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キーワード:

18トリソミー、ペースメーカー埋め込み、生活の質

【背景】18トリソミー(18T)は3500-8500人に一人の割合で発生する生命予後不良な染色体異常である。かつてのガイドライン(GL)では治療介入に対し消極的な方針であったが、医療・福祉の発展を背景に2004年新たなGLが策定され、個々の患児に対し最善の利益を見出す方針が提唱された。ペースメーカー植え込み術(PMI)の適応に関しては、高度房室ブロックにより症候性徐脈を認める場合はクラスIに該当するが、小児においては依然慎重に議論されている。【症例】9歳女児。身長86cm、体重7.3kg、寝返り可能であり、徐々に成長発達している。診断は18T、DORV、large VSD、mild PS、bicuspid AoV、mild TRであり、出生後から肺体血流のバランスが保たれ、手術介入なく内科的管理で外来経過観察となっていた。7歳ごろから高度AVBに伴う徐脈が出現し、心不全のため入退院を5回反復した。抗心不全治療を強化し、AVB改善傾向となりβ刺激薬(デノパミン)の大量投与などの内服薬治療へ切り替え外来管理としていた。1回の入院は平均4週間程で、繰り返す入退院により、家族も含めQOLが損なわれ、QOL改善を目的とした積極的治療介入(PMI)を検討した。薬物療法による管理には限界がある一方で、18Tに対するPMIの場合、全身麻酔を含む術前後の管理のリスクもある。患児家族の状況や意向を把握し、患児の最大の利益を考慮して医師をはじめ多職種での議論を進めた。その結果、気管切開となるリスクも十分に理解して頂き、手術は最も侵襲が少なく、QOLも保てるよう、また体形や血管走行が特異なため心外膜リードを用いたVVI (backup HR=90)を選択した。術後経過は良好で手術室で抜管し、PMチェックを施行して術後1週間ほどで退院となった。その後の経過も良好であり、以後の入院も認めていない。【結語】高度AVBを伴う18Tの9歳女児におけるPMIの適応に関して慎重に議論を進め、PMIを施行しQOLの改善が得られた。