講演情報

[I-P03-4-01]カテーテル治療が唯一の治療手段であった、両側乳び胸を合併した未熟児動脈管開存症の1例

大津 生利衣, 鍵山 慶之, 山川 祐輝, 清松 光貴, 高瀬 隆太, 寺町 陽三, 須田 憲治 (久留米大学医学部小児科学講座)
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キーワード:

未熟児動脈管開存症、先天性乳び胸、カテーテル治療

日齢7の女児、妊娠後期に著明な胸水を契機に先天性乳び胸と診断され、胎児水腫のため妊娠33週0日、体重1832gで出産した。出生時より両側胸水を連日500ml/日以上排出し、十分量の水分・凝固因子・アルブミン・免疫グロブリンを投与したが乏尿が持続していた。動脈管は最小径3.3mmと大きく腹部大動脈の逆流を認め日齢5にNICUより動脈管に対する治療の依頼があった。1日尿量は2-5ml(1-3ml/kg/日)と高度の乏尿でBUN 35/Cr 1.4と上昇傾向であり、PT-INR 3.4と著明に上昇しており低ガンマグロブリン血症も認めた。乳び胸治療薬としてのオクトレオチドは動脈管存在下では壊死性腸炎の副作用の懸念から使用しにくく、infant heart teamで協議し非ステロイド性抗炎症薬および外科的動脈管結紮術は腎機能障害および出血や術創感染・創傷治癒不全の懸念のため困難と判断した。当院は2kg未満の動脈管開存症に対する経皮的動脈管閉鎖術の適応施設であるためカテーテル治療の方針として家族の同意を得た。治療当日まで乏尿が持続しており、さらにBUN 61/Cr 1.7と上昇していたが、造影剤を使用せず心エコーガイドでカテーテル治療を施行し、無事に動脈管は閉鎖した。治療後はそれまで反応がなかった利尿剤へ良好な反応が得られる様になりBUN/Crは経時的に正常化した。乳び胸に対するオクトレオチドも安全に導入でき、最終的にはピシバニールによる胸膜癒着術を行い胸水は消失し、日齢78に後遺症なく退院した。未熟児動脈管開存症に対するカテーテル治療は、安全で低侵襲な治療手段である。重症例では造影剤を使用せず心エコーガイドでも行い得る。