講演情報

[I-P03-4-02]右房性三心房心により胎児胸水を認め、生後に上大静脈症候群が悪化した新生児症例

木村 瞳1, 篠原 務1, 竹中 颯汰1, 鵜飼 啓1, 安田 昌広1, 小山 智史1,2, 櫻井 寛久3 (1.名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学分野, 2.独立行政法人 地域医療機能推進機構 中京病院 小児循環器科, 3.独立行政法人 地域医療機能推進機構 中京病院 心臓血管外科)
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キーワード:

胎児胸水、右房性三心房心、上大静脈症候群

【緒言】胎児胸水の多くは乳び胸であり、先天性乳び胸の原因は多岐に渡る。胎児期から右房性三心房心による上大静脈狭窄をきたし、中心静脈圧上昇に伴う先天性乳び胸を認めた症例を報告する。【症例】在胎週数33週0日、出生体重1918g、前期破水により緊急帝王切開で出生した男児。在胎29週より両側胎児胸水、胎児水腫を指摘され、前医総合周産期センターにて胸腔-羊水腔シャントによる胎児治療後に当院産科へ転院した。胎児心エコーでは右室低形成と下大静脈の蛇行を認めたが、胎児胸水、胎児水腫との関連は不明であった。出生直後より両側胸水に対し人工呼吸管理と胸腔持続ドレナージを開始し、その性状から先天性乳び胸水と診断した。心エコーでは右房内に複数の隔壁が見られ、下大静脈・上大静脈の軽度の狭窄、右室低形成を認めた。卵円孔は右左短絡でSpO2は90%前後であった。出生時から頭頚部浮腫を認めていたが、当初はリンパ管形成不全に伴うものと判断した。ダウン症候群、Noonan症候群、Tunrner症候群の染色体・遺伝子異常を認めず、先天性乳び胸水に対するステロイドやオクトレオチドの治療効果も認めなかった。生後1か月半より著明な体重増加、頭頚部浮腫の増悪、脳血流の悪化を認めた。エコーにて上大静脈狭窄が進行しており、乳び胸を含めて右房性三心房心による上大静脈症候群の症状と認識した。生後2か月で外科手術(右房内隔壁除去、下大静脈・上大静脈の狭窄解除、心房中隔閉鎖)を施行した。術後は右室低形成の影響により右心不全の管理に難渋したが、胸水は速やかに減少し、術後1か月で完全に消失した。また頭頚部の浮腫も軽快した。術後5か月経過し、上大静脈症候群の再発を認めていない。【結語】先天性乳び胸と頭頚部の浮腫を伴った症例においては、右房性三心房心に起因する上大静脈の狭窄も鑑別するべきという教訓的な症例となった。