講演情報

[I-P03-4-03]心疾患児に発症したリンパ漏の疫学、治療、転帰

山田 佑也, 菅原 沙織, 太田 隆徳, 伊藤 諒一, 野村 羊示, 田中 優, 今井 祐喜, 鬼頭 真知子, 河井 悟, 安田 和志 (あいち小児保健医療総合センター 循環器科)
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キーワード:

リンパ漏、乳び胸、chylothorax

【背景】近年、リンパ漏に対する新規検査や治療が盛んであるが、その前提となる全体像について国内からの報告は少ない。【方法】当院で2015~2024年にリンパ漏を発症した心疾患児を後方視的に検討した。当院では心臓手術後の栄養開始時に脂肪制限食を原則使用していない。リンパ漏診断は胸水性状分析に基づいて行った。【結果】65名の心疾患児に68例のリンパ漏が発症した。心疾患は二心室/単心室疾患が43/22名(66%/34%)、Arch anomaly 16名(24%)、TAPVC 7名(10%)。基礎疾患は21トリソミー17名(26%)、Heterotaxy 6名(9%)、その他先天異常13名(20%)。心臓手術後発症は66例(同期間の手術1,879件中4%)。術式はBT shunt 12例(18%)、Arch repair 11例(16%)、TAPVC repair 7例(11%)、TCPC 5例(8%)。いずれも中央値(範囲)で、月齢1(0~38)、体重3.0kg(1.7~12.2kg)、ドレン留置期間13日(2~288日)、最大ドレン量25ml/kg/日(4~141ml/kg/日)。ドレン留置30日以上5例(7%)、最大ドレン量100ml/kg/日以上3例(4%)。鎖骨下/無名静脈閉塞5例(8%)。リンパ管シンチグラフィー施行8例(12%)。保存的治療は脂肪制限食67例(99%)、絶飲食31例(46%)、オクトレオチド41例(60%)、第13因子製剤49例(72%)、ステロイド38例(56%)。侵襲的治療は胸水漏出点閉鎖6例(9%)、胸膜癒着1例(1%)、リンパ管静脈吻合2例(3%)。リンパ漏が原因の死亡3例(5%)はいずれも月齢1以下、体重3kg以下の心臓手術後発症例で、1例はCFC症候群によるリンパ管低形成疑い例、残り2例は侵襲的治療にも抵抗性の難治例であった。【結論】大半の症例は保存的治療または従来の侵襲的治療で対応可能であったが、治療抵抗性で救命困難な症例も少数存在した。この群への適切な治療戦略の確立が重要であり、新規治療の導入による予後改善が今後の課題である。