講演情報

[I-P03-4-04]術後乳び胸合併症例の臨床像と当院での治療戦略の再編

永峯 宏樹1, 三森 宏昭2, 渡邉 伊知郎2, 大木 寛生1, 前田 潤1, 三浦 大1, 山岸 敬幸1 (1.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 2.東京都立小児総合医療センター 集中治療科)
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キーワード:

乳び胸、胸水、術後合併症

【背景】小児心臓術後の乳び胸の発生率は2.8 ~3.8%程度と現在も主要な術後合併症の一つである。【目的】当院における術後乳び胸の臨床像を明らかにし、治療戦略を再編すること。【方法】2010年3月~2024年12月において当院で行われた小児心臓外科手術1413例を対象とし、後方視的に乳び胸合併例を抽出した。乳び胸の診断は、胸水中の白血球1000 個/μL以上、リンパ球が 70~80%以上、経腸栄養下においてはトリグリセリド濃度が 110 mg/dL以上を満たすものとした。乳び胸発症例の患者背景(手術時の年齢、体重、染色体異常の有無、心疾患の診断名、合併症の有無など)、周術期の因子(術式、経腸栄養の有無など)、乳び胸治療の方法・経過について検討した。【結果】乳び胸は49例(3.5%)認めた。手術時平均月齢10.0ヶ月、平均体重4850g、10例が染色体異常を有していた。心疾患の診断は大血管転位症 10例、総肺静脈還流異常症8例、房室中隔欠損症 7例 、ファロー四徴症 7例、心室中隔欠損症7例、両大血管右室起始症6例、左心低形成症候群3例、総動脈管症1例であった。乳び胸治療法については内科的治療(絶食、サンドスタチン、第13因子、エチレフリン)にて開始され、改善しない場合に外科的介入がなされていた(リンパ管造影、胸管結紮術、胸膜癒着術、リンパ管静脈吻合術)。治療開始時期は平均で術後6.2日、外科的介入時期は平均で術後28.4日、治療総期間は平均20.3日であった。42例で軽快したが、7例ではコントロール不良な乳び胸下で死亡となっていた。死亡例には新生児症例、染色体異常合併例が含まれていた。【考察】当院での新たな治療戦略では、外科治療を要する難治症例に対応するためリンパ管MRI、リンパ管シンチグラフィーまでの期間短縮化を行うこととした。また、絶食の有効性を短期間で評価し、難治症例においては経腸栄養の早期再開も検討する方針とした。