講演情報
[I-P03-4-05]乳び胸水に対して使用したMCTミルクをいつ一般乳に戻すか
○中村 祐輔, 築野 一馬, 大森 紹玄, 増田 詩央, 百木 恒大, 真船 亮, 河内 貞貴, 星野 健司 (埼玉県立小児医療センター 循環器科)
キーワード:
乳び胸、MCTミルク、治療期間
【背景】乳び胸は先天性心疾患の周術期によく経験する合併症の一つである.中鎖脂肪酸(MCT)ミルクはその治療として用いられるが,治癒後に一般乳ないし母乳に戻すタイミングについて一定の見解はない.一方でMCTミルクは,経口摂取が進まず経管栄養を要する頻度が上がること,高価格であることなどのデメリットも多く,自宅でこれを継続することは患者と家族にとって負担の大きいものである.【目的】術後乳び胸に対してしたMCTミルクを一般乳に戻す適切な時期を検討する.【方法】2021年1月から2024年12月までに当院で周術期に乳び胸と診断され栄養をMCTミルクに変更した症例を後方視的に抽出し,胸水量,手術内容,背景疾患,一般乳に戻すまでの日数の相関,再燃有無に関して検討した.【結果】周術期にMCTミルクを使用した91例のうち,乳びの診断基準を満たさないもの,乳び心嚢水/腹水であったもの,一般乳への変更時期やアウトカムが抽出できなかったものなどを除外し,60例が対象となった.MCTミルクから一般乳に変更するまでの日数はドレーン留置期間が長かった症例ほど多くなる傾向にあったが,結果的に変更後に再発した症例は4例にとどまった.4例の背景は,染色体疾患2例,総胸水量2000ml/kg以上1例,単心室疾患1例であった.一方で血行動態が正常化した二心室循環の術後症例は16例で,診断から1週間以内にMCTミルクを終了した例も5例含まれたが,いずれも再燃はなく安全に一般乳に変更されていた.【結論】再燃のハイリスク疾患を除けば,周術期の一時的な乳び胸水は一度漏出が止まれば短期間で一般乳に変更することが可能である.