講演情報

[I-P03-4-06]術後乳び胸水のリスク因子に関する後方視的検討

清水 優人1, 土田 裕子1, 宍戸 亜由美1, 杉山 隆明1, 藤岡 泰央1, 吉田 礼2, 安川 峻3, 小林 城太郎3, 稲毛 章郎1, 大石 芳久1, 中尾 厚2 (1.日本赤十字社医療センター 小児科, 2.日本赤十字社医療センター 新生児科, 3.日本赤十字社医療センター 心臓血管外科)
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キーワード:

乳び胸水、術後早期経腸栄養、先天性心疾患

諸言小児の心臓血管外科手術後に発生する乳び胸水は、死亡率の増加、入院期間の延長、医療費の増大に関与する重要な合併症である。近年、心臓手術後の乳び胸水の発生率は増加傾向にある。その要因として手術手技の複雑化や術後早期経腸栄養の影響が指摘されているが、後者に関する報告は少ない。目的術後乳び胸水のリスク因子を明らかにすること。当院の症例を後方視的に解析した。 方法対象は2018年1月から2024年10月に当院NICUで心臓外科手術を受けた患者で経過・性状などから乳び胸水と診断された症例を術後乳び胸水あり[C群]、術後乳び胸水なし[N群]とし、染色体異常、術前からの乳び胸水、PDA clipping手術のみ、術後1週間以内に経腸栄養を開始できなかった症例を除外した。主要アウトカムを術後乳び胸水の有無とし、2群間 の比較にはt検定、Mann-Whitney U検定、カイ2乗検定を用い、P<0.05を統計学的有意とした。結果本研究の対象は計104例で、うち術後乳び胸水を発症した症例は8例(7.8%)だった。[平均在胎週数(C群:39(37-40)vsN群:39(37-40))、手術日齢(C群:9.0(4.5-22.0)vsN群:15.0(10.0-43.0))]8症例にはIAA/CoA4例、TAPVC2例、Truncus1例、TGA1例が含まれていた。解析の結果、各群間で術前の経腸栄養量(ml/kg/day)(C群:10(0.0-28.3)vsN群:100(45.0-126.0), P=0.006)、Risk Adjustment for Congenital Heart Sugery Score:RACHS score≧4(C群:N=6(75%)vsN群:N=39(40.6%), P<0.001)、術後経腸栄養開始時間(hours)(C群:34.5(22.8-45.3)vsN群:65.5(46.0-92.3), P=0.019)に統計学的有意差が示された。考察術前経腸栄養量や手術手技の複雑化は臨床的な印象や既報告と合致する内容だった。本研究では術後早期経腸栄養で術後乳び胸水の発生リスクが増加する可能性が示唆された。結論術後早期経腸栄養により乳び胸水の発生リスクを高める可能性が示され、術後早期経腸栄養の適応など今後のさらなる検討が求められる。