講演情報
[I-P03-4-07]先天性心疾患手術後の難治性乳び胸に対する侵襲的治療の成績
○渕上 裕司, 帆足 孝也, 平野 暁教, 細田 隆介, 飯島 至乃, 鈴木 孝明 (埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科)
キーワード:
術後乳び胸水、周術期管理、先天性心疾患手術
(背景)先天性心疾患術後乳び胸に対する確立した治療ガイドラインは存在せず、難治性胸水は侵襲的治療をもってしても時に致死的である。当院では乳び胸治療として1.脂肪制限、2.絶飲食/中心静脈栄養、3.オクトレオチド投与の保存的治療から4.侵襲的治療と段階的に強化する方針としてきた。(目的)本治療方針の有効性と、特に侵襲的治療を要する難治性乳び胸の危険因子とその治療成績を検討する。(方法)対象は排液中のトリグリセリド>1.1 mmol/Lあるいは単核球>80%が証明され、継続的ドレーン留置を要した2007年から2023年の78例。内訳は新生児18例(23%)、乳児47例(60%)、幼児10例(13%)、7歳以上3例(4%)。単心室は20例(26%)。染色体異常は20例(26%)。侵襲的治療として2017年まで外科的胸管結紮、2018年以降はリンパ管静脈吻合(LVA)を基本とし、閉塞/狭窄静脈にはカテーテル治療も併施した。検討項目は1. 各段階的治療の奏効率、2. 侵襲的治療を要する難治性乳び胸水の危険因子、および3. 侵襲的治療の効果と予後不良因子。(結果)1. 保存的治療で治癒したのは67例(86%)でドレーン抜去までの平均期間は23.5日。脂肪制限のみで34例(44%)、絶飲食/中心静脈栄養で16例(21%)、オクトレオチド投与追加で17例(22%)がそれぞれ改善。2. 残りの11例(14%)は侵襲的治療を要し、多変量解析での危険因子は月齢(p = 0.04)。侵襲的治療群において、胸管結紮により6例中2例(33%)が、LVAでは5例中3例が(60%)が治癒。両者の有効性に明らかな有意差を認めず(p = 0.38)。死亡例は4例で全例が静脈閉塞/狭窄に対するステント留置例(p < 0.0001)。(まとめ)1. 先天性心疾患術後乳び胸の約9割で保存的治療が奏功。2.低月齢での心臓手術は難治性乳び胸の危険因。3. 上半身の静脈還流不全は予後不良因子。