講演情報

[I-P03-4-09]当院における乳び胸診療とその治療成績の変遷~7年間を振り返って

鈴木 彩代1, 横山 亮平1, 村岡 衛2, 連 翔太1, 白水 優光1, 福岡 將治2, 田尾 克生1, 佐藤 正規1, 倉岡 彩子1, 永田 弾2, 佐川 浩一1 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 集中治療科)
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キーワード:

乳び胸水、周術期合併症、集中治療

【背景】先天性心疾患術後乳び胸の診断・治療の進歩に伴い、当院でも臨床症状やリンパ管シンチグラフィ(LS)等でリンパ動態を評価し、リピオドールリンパ管造影(IL)やリンパ管静脈吻合(LVA)等新規治療を行っている。【目的】当院の乳び胸診療と治療成績の変遷を明らかにする。【方法】対象は2018年1月1日~2024年12月31日に心臓手術後に胸水検査で乳び胸と診断した167例。診療録を元に患者背景、検査・治療、ドレーン留置日数や排液量、死亡率、入院・集中治療室滞在期間等の転帰を調査。2018~2020年をEra1(74例)、2021~2024年をEra2(93例)として比較した。【結果】[診断]術後胸水検査施行まではEra2が短く(中央値10日vs 7日 p=0.00070)、LS施行はEra1で19/74件(26%)、Era2で32/93件(34%)でEra2に多い傾向だった。[治療]脂肪制限、絶食、オクトレオチド、ステロイド使用は両群で差はなく、フェニレフリンはEra2で多く使用された(0/74例, 0% vs 12/93例, 13%、p=0.0013)。両群の各8例(重複あり)に侵襲的治療が施行され、胸管結紮術(6/8例, 75% vs 1/8例, 13% p=0.024)、胸膜癒着療法(5/8例, 63% vs 0/8例, 0% p=0.011)はEra2で少なく、LVAはEra2で多く施行(0/8例, 0% vs 5/8例, 63% p=0.043)された。[転帰]院内死亡(10/74例, 14% vs 10/93例, 11% p=0.40)、入院・集中治療室滞在期間に差はないが、ドレーン留置日数(中央値 22日 vs 17日 p=0.020)、排液量10ml/kg/日以上の日数(中央値7.5日vs 7日 p=0.029)はEra2が短く、排液量20ml/kg/日が7日以上の重症例はEra2で少なかった(28/74例, 38% vs 21/93例, 23% p=0.032)。【考察・結論】Era2ではEra1より、ドレーン留置日数は短縮、多量の胸水が長期化する重症例の割合は減少した。胸水検査・診断の迅速化や、侵襲的治療の変化(中枢リンパ流障害を引き起こしうる胸管結紮・胸膜癒着術から中枢リンパ流温存可能なIL、LVA等へのシフト)が予後改善に寄与した可能性がある。