講演情報
[I-P03-5-01]内科的治療のみで救命した早産児の劇症型心筋炎
○菅原 沙織1,2, 関根 佳織1, 飯田 美穂1, 櫻井 亮佑1, 石井 純平1,3, 國分 文香1, 佐藤 智幸4, 宮本 健志1, 白石 秀明1 (1.獨協医科大学 小児科学, 2.あいち小児保健医療総合センター, 3.土屋小児病院, 4.自治医科大学附属病院)
キーワード:
劇症型心筋炎、早産児、ECMO
【背景】新生児心筋炎の約7割は劇症型とされ、死亡率は50%以上と予後不良である。特に早産・低出生体重児では神経学的合併症リスクが高く、管理が困難である。【症例】在胎34週0日、出生体重2348g、Apgarスコアは4点(1分)、7点(5分)、骨盤位のため帝王切開で出生した。母体は妊娠中に感染兆候を認めなかった。出生直後から呼吸障害がみられ、サーファクタント投与でも改善しないため日齢1に当院に搬送された。入院時の心エコーではLVEF16%と低下を認め、心電図異常と心筋トロポニン陽性から急性心筋炎と診断した。冠動脈起始異常は認めなかった。入院時より循環不全が顕著で、重度の心不全を呈していた。ECMO可能な施設への搬送も考慮したが、搬送のリスクおよび早産児でのECMOによる出血リスクが高いことから家族は専門施設への搬送を希望せず、当院での内科的管理を継続した。人工呼吸管理、カテコラミンおよび免疫グロブリン大量療法を開始した。一時無尿に対し腹膜透析を併用したが、徐々に自尿も得られ、カテコラミン減量と心筋保護薬の導入を行った。LVEFは退院時には40%程度まで改善し、経口哺乳が可能な状態となり生後6カ月に自宅退院した。入院経過中に脳室内出血はなかったが低酸素虚血に伴う水頭症を合併し脳室-腹腔シャント術を施行した。【考察】劇症型心筋炎は急速に心不全が進行するため、ECMOが可能な専門施設への搬送が望ましい。本症例においても専門施設への搬送を考えたが、進行性に状態が悪化し移動が困難だった。早産児でありECMOによる出血リスクが高いことから内科的管理により救命し得た。長期管理を要したが、経口哺乳まで回復し、退院に至ったことは貴重な経験である。【結語】早産・低出生体重児の劇症型心筋炎において、ECMOが適応困難な場合でも、適切な内科的管理で救命できる可能性がある。