講演情報
[I-P03-5-02]造影心臓MRIと心筋生検結果から確定診断した新生児急性心筋炎の1例
○田中 優, 菅原 沙織, 山田 佑也, 伊藤 諒一, 野村 羊示, 鬼頭 真知子, 河井 悟 (あいち小児保健医療総合センター 循環器科)
キーワード:
急性心筋炎、心内膜下心筋生検、心臓MRI
【緒言】急性心筋炎は感染症などを契機に心筋に炎症が惹起され、心機能低下および不整脈により種々の症状を呈する症候群である。新生児発症の急性心筋炎発症は非常に稀であり、経過を報告する。【症例】他院で在胎41週、児頭骨盤不均衡のため帝王切開で出生、出生後特に問題なく日齢6に退院した。日齢14に啼泣後に顔面蒼白となり近医を受診、受診時に頻脈、レントゲン上の心拡大を認め、血液検査では心筋逸脱酵素の上昇、心臓超音波検査で左心系の拡大、左室収縮能低下(収縮率45%)を認め、当院へ精査加療目的に転院となった。FilmArray呼吸器パネルでは特定の病原体は検出されなかった。呼吸補助およびカテコラミンの投与を開始し左室収縮能は改善傾向となった。経過より急性心筋炎を第一に疑い、評価目的に日齢17に心内膜下心筋生検を施行した。後日判明した結果として、光学顕微鏡所見では心筋細胞の壊死、炎症細胞浸潤はごく少数であったが、電子顕微鏡所見では心筋融解像を認め、急性心筋炎の診断とした。日齢24にHR 300/minの上室性頻拍を認めたこともあり、心保護を目的にビソプロロールフマル酸塩の内服を開始した。生後1か月時に造影心臓MRIを施行した。T1値1095-1154 msec(施設基準1050±50 msec)、ECV 30.6-32.8%(施設基準23-28%)、T2値57.0-59.8 msec(施設基準54.8±5.0 msec)といずれも上昇を認め、また遅延造影も陽性であり、急性心筋炎の診断を支持するものと考えられた。退院後心臓MRIの結果も参考にエナラプリルマレイン酸塩の内服を開始した。【結語】新生児期急性心筋炎の診断、および治療方針決定に心内膜下心筋生検、心臓MRIのいずれもが有用であった。今後の経過観察については侵襲性の観点からは心臓MRIを優先する予定ではあるものの、心内膜下心筋生検の果たす役割は依然として大きいと考える。