講演情報

[I-P03-5-07]先天性心膜液貯留に対するコルヒチン治療が奏功した男児例

佐々木 美穂, 仲本 雄一, 豊野 学朋 (秋田大学 医学部 小児科)
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キーワード:

心膜液貯留、コルヒチン、先天性

【はじめに】心膜液貯留は特発性心膜炎が主な原因とされ, 通常は非ステロイド系抗炎症薬やステロイドが治療の主体となる. しかし, 難治性症例に対する治療戦略は本邦で確立されていない. 今回, 難治性の先天性心膜液貯留に対しコルヒチンを使用し, 良好な治療効果を得た症例を経験したため報告する.
【症例】当院附属病院出生の男児. 在胎38週0日, 吸引分娩にて出生. 出生体重3,065g, Apgar score 8/9. 胎児期より心膜液貯留を指摘され, 新生児期より当院NICUに入院. プレドニゾロンおよびフロセミドを投与したが, 心膜液の減少は認められず, 呼吸・循環動態に問題がないため日齢35で退院. しかし, 外来通院中に心膜液の増加傾向を認め, 生後2か月で全身麻酔下に心嚢ドレナージを施行. 術後も心膜液の減少は乏しく, 術後5日目にアスピリンを開始したが改善が見られなかった, そこで, 院内未承認医薬品審査を経て, 術後19日目にコルヒチンを追加したところ, 心膜液の減少を認め, 術後22日目に退院. その後は外来でコルヒチンの投与を調整し, 副作用なく生後11か月までに漸減・終了した.
【考察】コルヒチンは本邦において家族性地中海熱に適応があるが, 心膜炎に対する適応はない. 一方, 欧米では非ステロイド系抗炎症薬とともに特発性心膜炎の第一選択薬として使用され. 再発予防にも有効とされている. 本症例では, 難治性の先天性心膜液貯留に対しコルヒチンが奏功し, 副作用なく安全に投与可能であることが示唆された. 今後, 同様の症例における治療選択肢として, コルヒチンの有用性についてさらなる検討が求められる.