講演情報
[I-P03-5-08]VSD術後に家族性地中海熱の発症が疑われた1例報告
○浅井 日沙1, 寺田 貴史1, 山本 裕介1, 櫻井 一1, 鈴木 謙太郎2, 森本 美仁2, 郷 清貴2, 山本 英範2, 加藤 太一2, 大橋 直樹2, 六鹿 雅登1 (1.名古屋大学医学部付属病院 小児循環器センター 心臓外科, 2.名古屋大学医学部付属病院 小児循環器センター 小児科)
キーワード:
家族性地中海熱、VSD術後、心膜炎
[はじめに]家族性地中海熱(FMF)は反復する38℃以上の発熱と腹膜炎、胸膜炎などの漿膜炎症状を特徴とする遺伝性自己炎症性疾患であるが、その発症機序は明らかになっておらず、診断に苦慮することも多い。今回我々は、VSD術後にFMF発症が疑われた症例を経験したため、報告する。[症例]16歳男児。 生後心雑音を指摘され、pm inlet VSDと診断された。生後半年まで利尿剤、ジゴキシンを投与されていた。既往のネフローゼ症候群再発時に心拡大を指摘され、手術適応と判断されて当院紹介となった。[経過] 人工心肺使用心停止下にePTFEパッチによるVSD閉鎖を施行し、術後12日目に自宅退院となった。退院後の術後15日に左肩痛、37.8℃発熱のため近医ERを受診し、軽度の心嚢水が認められ、心膜切開後症候群の疑いにて入院の上、ASAが投与され、その後軽快退院した。術後4週後に胸痛、肩痛のため再度近医に受診し、CRP4.97と軽度上昇を認め、心膜切開後症候群、心膜炎の疑いで再度入院し、CEZ点滴が行われ、軽快退院した。以降も術後から1ヶ月に1回の頻度で高炎症を伴う胸背部痛と5∽6日後の症状の軽快を繰り返した。術後4度目の症状出現時に当院に紹介された。炎症反応の上昇をみとめたが、創部感染や感染性心内膜炎などの感染症を示唆する所見はなく、経過中に採取された血液培養含む培養検査は全て陰性であった。また、抗核抗体をはじめとする自己抗体は全て陰性であった。心膜炎を合併する周期性発熱からFMFを疑いコルヒチンの内服を開始したところ、症状の改善が見られ、現在まで再発なく経過している。[考察]本症例では術後に炎症反応を伴った繰り返す発熱および胸痛からFMFと考え、コルヒチン治療を行った。また、本症例では手術のストレスがFMF発症のきっかけとなった可能性が考えられる。FMFの原因に関して文献的考察を加えて報告する。