講演情報

[I-P03-5-10]胎児心臓超音波検査で診断された先天性心室憩室の4例

小泉 奈央, 小森 和磨, 矢内 敦, 井上 史也, 樽谷 朋晃, 加藤 昭生, 池川 健, 若宮 卓也, 小野 晋, 柳 貞光, 上田 秀明 (神奈川県立こども医療センター 循環器科)
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キーワード:

心室憩室、心室瘤、胎児心臓超音波検査

【背景】先天性心室憩室(VD)は稀な先天性心疾患であり、多くは無症状だが、破裂や血栓形成、不整脈などの合併症を引き起こし、致命的となることもある。憩室の治療方針は確立されておらず、症例ごとの個別対応が求められている。【目的】本研究の目的は、当院で経験したVDの臨床経過を検討し、文献と比較しその特徴や治療方針を明らかにすることである。また、無症状で経過観察を行った症例と手術を施行した症例の経過や結果を比較・分析することを目指す。【方法】2014年8月から2025年2月までの間に、胎児心臓超音波検査で心室憩室と診断された4例の症例を対象に検討を行った。各症例について、臨床症状、画像診断、手術適応の判断基準、術後経過を調査し評価した。【結果】対象の4例中、3例は右室憩室、1例は左室憩室であった。1例は生後23日に心室憩室の切除術を行い術後経過は良好であった。3例は無症状で、経過観察の結果、心室憩室以外の異常は認められなかった。全例で良好な心室機能が維持され、大きな憩室でも血栓形成は確認されなかった。【考察】VDでは左室憩室の報告が多く、重篤な合併症のリスクが高い。文献では、破裂や不整脈のリスクを低減するために手術を推奨するものもあるが、無症状の大きな憩室では心機能低下のリスクも伴う。当院の症例では、無症状の大きな憩室で抗血小板薬中止後も良好な経過が得られており、経過観察の可能性が示唆された。【結論】本研究では、無症状の大きな心室憩室でも経過観察により良好な結果が得られる可能性が示された。遠隔期のリスクとして不整脈、血栓、心室破裂が考慮されるため、長期的な観察と管理が不可欠である。手術のタイミングは心室憩室の大きさや患者の全身状態を考慮し、外科医と協議する必要がある。VDの治療に関する確立されたガイドラインはなく、症例ごとの慎重な判断と適切なフォローアップが求められる。