講演情報

[I-PAL-2]二心室修復術後に残存する肺高血圧症の中期的予後に関する検討:JACPHRからの中間解析報告

住友 直文1, 内田 敬子2, 高月 晋一3, 石井 卓4, 石田 秀和5, 細川 奨9, 福島 裕之6, 小垣 滋豊7, 稲井 慶8, 山岸 敬幸1,10, 土井 庄三郎4 (1.慶應義塾大学 医学部 小児科学教室, 2.東京医科大学 細胞生理学分野, 3.東邦大学医療センター大森病院 小児科, 4.東京科学大学病院 小児科, 5.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学, 6.東京歯科大学市川総合病院 小児科, 7.大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科, 8.東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患診療科, 9.武蔵野赤十字病院, 10.東京都立小児総合医療センター)
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キーワード:

肺高血圧症、先天性心疾患、レジストリ

【背景】先天性心疾患に合併する肺高血圧症(PH)の中でも、二心室修復術後の残存肺高血圧症(術後PH)は予後不良とされる。しかし、国内での術後PH症例の予後や、予後に関連するリスク因子は未だ明らかでない。
【目的・方法】2021年8月‐2024年12月にJACPHRに登録された術後PH患者145名の内、登録後に1回以上フォローアップ入力がされている患者86名(男47名)を対象とし、フォロー期間中の対象患者の心血管イベント(死亡、肺移植、心不全入院、NYHA・心機能増悪)の有無と患者背景情報を収集し、単変量解析としてLog-rank検定を、多変量解析としてCox回帰分析を行い、リスク因子を検討した。
【結果】対象患者のフォロー期間中央値(IQR1-3)は17.9(13.5-24.4)ヶ月だった。心血管イベント発生は8名(9.3%)、死亡は4名(4.7%)で、3年イベント回避率82.2%、3年生存率96.1%だった。心血管イベントに関する層別化比較では、登録時の平均肺動脈圧(MPAP)≧30mmHg群、肺血管抵抗係数(PVRi)≧4.0W.U・m2群、BNP≧40pg/ml群、PH標的治療薬3剤投与群それぞれにおいて、イベント回避率が有意に低かった(MPAP:100%vs56%(p<0.001)、PVRi:100%vs59.5%(p<0.001)、BNP:97.7%vs56.3%(p=0.005)、治療薬:94%vs48.1%(p=0.02))。また累積死亡率についても、上記項目で有意な群間差が見られた。性別、年齢、染色体異常、心疾患分類では群間差は見られなかった。Cox回帰分析では、MPAP値のみが心血管イベント発生と有意に関連していた(ハザード比:1.095、95%CI 1.020-1.176、p=0.01)。
【考察・結論】レジストリにおける術後PH症例の中期的予後は比較的良好であったが、MPAP・PVRi・BNP高値例、3剤以上の標的治療薬投与例は予後不良の可能性があり、特に注意深いフォローアップが必要と考えられた。今後、レジストリのフォローアップ期間がさらに延長されることで、術後PH症例の予後を規定する因子がより明らかとなることが期待される。