講演情報
[I-PAL-3]胎児心室頻拍の全国調査
○三好 剛一1, 金 基成2, 島田 衣里子3, 漢 伸彦4, 加藤 愛章5, 前野 泰樹6 (1.国立循環器病研究センター 研究振興部, 2.国立成育医療研究センター 循環器科, 3.東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科, 4.福岡市立こども病院 胎児循環器科, 5.国立循環器病研究センター 小児循環器内科, 6.聖マリア病院 新生児科)
キーワード:
胎児心室頻拍、胎児治療、先天性QT延長症候群
【背景】胎児心室頻拍(VT)は超希少疾患であり情報が極めて限られている。【目的】本邦における胎児VTの実態、特徴的な診断所見、胎児治療の有効性及び安全性を確認することを目的とする。【方法】胎児心疾患レジストリの参加施設(77施設)に一次調査を行い、2014年1月~2023年12月に胎児VTが疑われた症例(出生後に確定したものを含む)を抽出し、二次調査を実施した。【結果】18施設より計25例が集積された。母体QT延長症候群(LQTS)を3例で認め、いずれも2型で予防投薬はなかった。胎児VTの診断週数は中央値35(22-40)週、心室拍数214(143-300)bpmで、持続性が12例(48.0%)、房室解離を21例(84.0%)に認めた。腔水症を13例(52.0%)、胎児水腫を7例(28.0%)で認めた。胎児治療は11例でなされ、胎児期にVTと診断された8症例では硫酸マグネシウム、メキシレチン、プロプラノロール、ナドロール、リドカイン(多剤併用5例)、胎児期は上室頻拍として管理された3症例ではソタロール、ジゴキシン(多剤併用2例)が投与された。奏効・部分奏効が9例(81.8%)で、リドカインによるせん妄以外に重篤な有害事象は認めなかった。分娩週数は38(28-40)週で、1例が重症エプスタイン病のため28週で死産(胎児死亡)となった。出生後の経過が追えた23例中、全例でVTが出現し、14例(60.9%)が治療抵抗性であった。18トリソミーの1例以外は全例生存中だが、神経発達障害を7例(31.8%)で認めた。LQTSは9例(2型6例、3型2例、不明1例)で、胎児診断週数は28週と早く、全例で胎児治療がなされていた。【考察】胎児VTの大部分が房室解離に基づき胎児診断されていたが、一部は上室頻拍として管理されていた。胎児治療の有効性と安全性が確認された一方で、出生後は治療抵抗性の症例が多く、神経発達障害を比較的高率に認めた。【結論】診断週数の早い胎児VTではLQTSを念頭に置き、積極的に胎児治療を試みるべきである。