講演情報

[I-PD2-3]Harmony経皮的肺動脈弁システムの新規実施施設登録のハードルと意義

成田 淳1, 渡邊 卓次2, 美馬 響3, 加藤 温子1, 石井 良1, 石田 秀和1, 世良 英子3, 北畠 康司1, 上野 高義2, 宮川 繁2, 坂田 泰史3 (1.大阪大学大学院 医学系研究科 小児科, 2.大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科, 3.大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科)
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キーワード:

カテーテル治療、肺動脈弁、成人先天性心疾患

Harmony経皮的肺動脈弁システムは、令和3年8月23日に薬事承認、令和4年4月1日付で保険収載が予定された事を受けて、本システムの臨床使用を希望する施設および術者の申請受付が開始された。当院も新規実施施設として参入を検討したが、ちょうどCOVID-19パンデミックの影響下にあり、術者基準である「主術者または第一助手として先天性心疾患のカテーテル治療を3年間で30例以上(うち16歳以上を15例以上)、あるいは年間10例以上(うち16歳以上を5例以上)」という条件を満たすことができず、申請を断念した。その後、令和4年中に適応症例数を回復させ、術者基準をクリアするに至ったが、今度は医療情報部との間で、Fit analysisに用いる患者情報の電子カルテ内外への出入力に関して非常に厳格なセキュリティ基準が課され、その条件整備に長期間を要した。そのため、令和5年の参入も見送り、最終的に令和6年での登録となった。当院が新規導入する意義は三点ある。第一に、当院では循環器内科と連携して成人先天性心疾患の診療を行っており、移行医療の観点からも、患者の長期的な人生に複数回介入が必要となる本手技において、小児科単独で対応することには限界がある。成人診療科との協働体制を持つ当院の役割は重要である。第二に、当院は心臓血管外科の歴史的背景からTPVIの潜在的適応症例が多数存在しており、ロストフォロー患者の追跡にも継続的に取り組んでいるため、今後10年以上にわたり対象患者の枯渇がないことが予測される。第三に、近畿圏には8つのTPVI実施施設が存在するが、その大半が大阪府に集中しており、兵庫県内にはまだ登録施設がない。当院には兵庫方面からの紹介も多数あり、地域医療の観点からも大きな意義を有する。このため当院におけるTPVI新規実施施設登録は、地域医療と患者フォローの観点から極めて意義深いと考えている。