講演情報
[I-PD2-4]肺動脈弁外科治療の現状と展望
○笠原 真悟, 徳田 雄平, 清水 春菜, 小松 弘明, 門脇 幸子, 小林 純子, 黒子 洋介, 小谷 恭弘 (岡山大学心臓血管外科)
キーワード:
外科治療、右心不全、弁膜症
(肺動脈弁治療の現状)外科的肺動脈弁置換術(SPVR)の使用材料としてはHomograftの使用が一般的であるが、本邦では入手制限のため、さまざまな素材、方法が試みられている。ePTFE membrane製のfan-shaped tricuspid valveを使用したePTFE conduitの仕様での良好な成績を報告された。現在では従来の外科的肺動脈弁置換術として、生体弁による治療が広く行われている。良好な成績が報告されているが、再手術という困難性、さらに無症状である症例に対して、どのタイミングで外科手術を行うかは古くから議論されてきた。カテーテルによる肺動脈弁挿入術(TPVI)が2023年3月から開始された。現時点におけるSPVRの適応は、重度の肺動脈弁逆流があり、かつ以下1~3のいずれかを認める場合と考えられる。1.右心不全症状や運動耐容能の低下、2.中等度以上の右室拡張や右室機能不全、3.進行性で有症状の心房不整脈または心室不整脈がある。この領域においては、TPVIは新たな治療戦略の選択肢となったことは事実であり、これが不顕性の右心不全の回避につながるとされている。(TPVI後の外科治療)現在ではTPVI in TPVIの報告はなく、外科手術が次の治療になるが、主には狭窄症例がその適応になる様である。現在までに報告されているTPVI後の外科手術の適応に関して、列挙する。1.三尖弁逆流の進行2.感染症3.冠動脈の圧迫4.ステントの破綻―プレステントの採用以来減少5.狭窄例に対する拡張障害、特にホモグラフトなどの狭窄している導管に入れた場合6.成長に伴う変化(まとめ)TPVIの普及に伴い、現在までのSPVRによるとされる手術合併症を回避することができ、より多くの無症状患者がこの手術の恩恵を受けられる可能性がある。正確な右室機能の評価により、life-longを考えた治療が行えるものと思われる。将来的には、外科手術とカテーテル治療を同時に行うはブリッド治療が普及するのではないかと考える。