講演情報
[I-PD3-1]先天性心疾患の胎児診断の今後の課題 ~胎児心エコーで見逃された疾患から考察する~
○林 知宏, 實川 美緒花, 増田 祥行, 荻野 佳代, 脇 研自 (倉敷中央病院小児科)
キーワード:
先天性心疾患、胎児診断、胎児心エコー
<背景・目的>先天性心疾患(CHD)の胎児診断数は年々増加しているが、依然として出生後に診断される重症CHDは少なくない。当院での胎児心エコーレベル2精査(以下レベル2)は前期群(2013~2017年)52例、地域連携を強化した後期群(2018~2024年)433例と急増している。当院でのCHD胎児診断の変遷と現状を把握し、今後の課題を検討する。<対象・方法>当科NICUに入室して新生児期に手術を検討した危急的CHDおよび中欠損以上の単独の心室中隔欠損(VSD)について胎児診断率、出生後診断の理由、染色体異常の合併などについて後方視的に検討。<結果>(前期群、後期群)として、危急的CHDの胎児診断率(26/92例:28.2%、60/101例:59.4%)と有意に上昇(p<0.05)。各疾患では単心室(63.6%、78.9%、p=0.36)、左心低形成症候群(20.0%、100%、p<0.05)、肺動脈閉鎖・重症肺動脈弁狭窄(40.0%、50.0%、p=0.61)、ファロー四徴症(35.2%、70.5%、p<0.05)、大動脈縮窄・離断CoA/IAA(20.6%、68.1%、p<0.05)、完全大血管転位TGA(25.0%、36.3%、p=0.97)、総肺静脈還流異常TAPVC(0%、10.0%、p=0.26)。レベル1スクリーニング(以下レベル1)でVSDが疑われるも、レベル2に紹介されず出生後診断となった2例にIAA、TGAが含まれていた。レベル2での見逃しはTAPVC 2例(2a、2b型)。他は全てレベル1での見逃しであった。後期群でのVSD胎児診断率9/66例:13.6%で、染色体異常の合併19/66例:28.7%。胎児診断されなかった染色体異常合併VSDは12例。<考察>レベル2の増加により危急的CHDの診断率は増加したが、TGA・TAPVCの胎児診断率は低かった。単独VSDの胎児診断率も低かったが、染色体異常の合併が少なくなく、今後の胎児診断の向上が望まれる。レベル1におけるVSDやTAPVCの検出要領のガイドライン収載や、VSDが疑われる場合に積極的にレベル2へ繋ぎ心外合併症も含めた評価を行えるよう啓蒙する必要がある。