講演情報
[I-PD3-4]これからの胎児心エコー検査ガイドライン~小児循環器医の立場から~
○漢 伸彦 (福岡市立こども病院胎児循環器科)
キーワード:
ガイドライン、胎児心エコー、胎児心臓病
胎児心エコー検査は、先天性心疾患の出生前診断および周産期管理において不可欠な検査である。日本のガイドラインの特徴は、検査をレベルI(スクリーニング)とレベルII(精査)に分けている点にある。2018~2020年の九州地区における調査では、先天性心疾患全体の胎児診断率は67%に達したものの、大血管転位症、大動脈縮窄症/大動脈離断症、総肺静脈還流異常など、生後早期に外科治療を要する重症例では診断率が依然として低く、また胎児診断がなされていても重症度評価が不十分なため、出生後に緊急搬送となる症例も少なくない。小児科医の立場からは、こうした搬送例をさらに減らすために、胎児診断および重症度評価の精度向上が重要な課題である。レベルIでは、現在の標準的評価に加えて、肺静脈の左房還流の確認、房室弁、半月弁、大動脈峡部の計測とZスコアを用いた定量的評価の導入が不可欠である。レベルIIにおいては、病態や疾患ごとの具体的な評価が少ないことが課題であり、胎児診断後の重症度評価に基づいて、適切な出産施設の選定や出生後の治療戦略まで一貫した管理計画を立てるために、評価基準の整備が必要である。具体的には、房室弁逆流、肺静脈狭窄、流出路狭窄の重症度評価や、左心低形成症候群、Ebstein病などの主要疾患に対する評価項目と基準、周産期管理方針を、フローチャート等を用いて具体的かつ視覚的に提示することが望まれる。特に、小児心臓外科の集約化や、胎児治療・出生直後の外科治療の進展に対応するためには、胎児心エコーを専門とする医師だけでなく、小児循環器科医師を含む多職種が共通認識を持って連携できるような、実践的なガイドラインへの改訂が求められる。2021年に改訂された日本のガイドラインも有用であるが、2023年に改訂されたASEやISUOGの国際ガイドラインも参考にしつつ、客観的かつ具体的な評価方法を記載し、現状の課題に即した次世代型の構築が強く望まれる。