講演情報
[I-PD4-3]遺伝研究のオールジャパン化と未来への継承:川崎病遺伝コンソーシアム
○尾内 善広 (千葉大学大学院 医学研究院 公衆衛生学)
キーワード:
川崎病、オールジャパン、遺伝コンソーシアム
明確な罹患率の人種差や、同胞例、親子例の多さに見られる家族集積性により関与が強く示唆される川崎病発症の遺伝要因は、ゲノムワイドなアプローチが可能となった2000年代に研究が加速し、今日関連の再現性が確認されているコモンバリアントはすべて最近20年の間に見出されている。知見の一部は新規治療法開発に結びき、また罹患感受性遺伝子バリアントの一部にはIVIG治療への反応性や冠動脈病変形成リスクとの関連が認められ、川崎病の重症化にも遺伝の関与があることが示されるといった一定の成果があった一方で、成人領域の多因子疾患に比べると発症や重症化に関与するレアバリアントの解明が遅れていることや、ポリジェニックスコアの有用性の検討が未実施であるなど課題もある。演者らは将来低コスト化する、あるいは新たな解析技術の実用化を見据え、川崎病研究を志す将来の研究者に対し研究資源と提供者の意志を継承して行くことを目的に、正確な臨床情報を伴った川崎病患者ゲノム試料を組織の垣根を越え前向きに収集する共同研究の枠組みとして「川崎病遺伝コンソーシアム」を2009年に設立した。40を超える施設にご賛同いただき、既に3000例を超す症例が登録済みである。最近ではプレドニゾロンによる初期強化療法を受けた患者を対象としたゲノムワイド関連解析により、治療不応リスクに関わる新規遺伝子座を見出しており、精密医療実現のため、標準治療についてもより大きな集団で同様の解析を予定している。また全国疫学調査とも連携の準備を進めており、様々な解析が可能になると期待している。川崎富作先生が遺された医師、研究者、患者とその家族の連帯は川崎病遺伝コンソーシアムの活動の大きな後押しとなっており、日本の強みであると考えている。