講演情報
[I-PD5-2]先天性門脈体循環シャント(CPSS)の全国調査:肺高血圧症合併患者の特徴と予後
○松岡 良平1, 石田 秀和2, 井福 俊允3, 大橋 啓之4, 永井 礼子5, 原 卓也6, 廣野 恵一7, 前田 潤8, 宗内 淳9, 村上 卓10, 永田 弾1 (1.九州大学 医学部 小児科, 2.大阪大学 大学院医学系研究科 小児科学, 3.宮崎県立宮崎病院 小児科, 4.三重大学 大学院医学系研究科 小児科学, 5.北海道大学 小児科, 6.大分県立病院 小児科, 7.富山大学 医学部 小児科, 8.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 9.JCHO九州病院 小児科, 10.筑波大学 医学医療系 小児科)
キーワード:
先天性門脈体循環シャント、肺高血圧、血管奇形
【背景】先天性門脈体循環シャント(CPSS)は稀な先天性血管奇形であり、特に肺高血圧症(PAH)合併例は予後不良である。本研究は、CPSSの臨床像と病態の可逆性を明らかにし、最適な治療戦略を確立する事を目的とした。
【方法】日本小児循環器学会研究課題Aとして、全国の小児循環器修練施設による多施設共同後ろ向き研究を実施し、REDCapにより患者情報を収集した。単心室循環と未修復の複雑先天性心疾患を除外し、PAH群と非non-PAH群の二群間で臨床パラメータを比較した。
【結果】計120例中40例がPAHを合併した。CPSSに対する治療は74例に閉鎖治療、9例に肝移植が行われ、37例は未治療または治療不可だった。PAH群(n=32)とnon-PAH群(n=67)の比較では、PAH群では治療前の血小板数(15.9×104/μl vs. 20.9×104/μ、p=0.002)と白血球数(5210/μ vs. 6300/μ、p=0.008)が低かった。治療前のPAH群の平均肺動脈圧(mPAP)は中央値36.5 mmHgであり、non-PAH群と比較して肺血管抵抗値が高く(5.7 Wood単位 vs. 1.1 Wood単位、p<0.001)、心係数は変わらなかった(5.0 l/min/m2 vs. 5.5 l/min/m2、p=0.579)。PAH群ではCPSS診断月齢が高く(74.5か月 vs. 6.0か月、p=0.005)、PAH群の25%はCPSS診断後にPAHを発症した。予後不明の1例を除き、PAHが改善した群(n=7; 閉鎖治療3例、肝移植3例、自然閉鎖1例)と非改善群(n=24; 閉鎖治療17例、肝移植3例、治療無し4例)を比較すると、改善群では治療前mPAPが全例40mmHg以下であり有意に低く(28.0 mmHg vs. 42.5 mmHg、p=0.020)、診断月齢は変わらなかった(49.0か月 vs. 74.5か月、p=0.808)。PAH非改善群のうち3例がPAHによる右心不全のため死亡した。
【結論】PAH群は白血球数と血小板数が低値であり脾機能亢進が示唆された。また、診断年齢と肺血管抵抗値が高かった。PAH改善例は治療前のmPAP≦40mmHgであり、肺血管病変が進行する前にCPSSを治療する事でPAHの予後を改善できる可能性が示唆された。
【方法】日本小児循環器学会研究課題Aとして、全国の小児循環器修練施設による多施設共同後ろ向き研究を実施し、REDCapにより患者情報を収集した。単心室循環と未修復の複雑先天性心疾患を除外し、PAH群と非non-PAH群の二群間で臨床パラメータを比較した。
【結果】計120例中40例がPAHを合併した。CPSSに対する治療は74例に閉鎖治療、9例に肝移植が行われ、37例は未治療または治療不可だった。PAH群(n=32)とnon-PAH群(n=67)の比較では、PAH群では治療前の血小板数(15.9×104/μl vs. 20.9×104/μ、p=0.002)と白血球数(5210/μ vs. 6300/μ、p=0.008)が低かった。治療前のPAH群の平均肺動脈圧(mPAP)は中央値36.5 mmHgであり、non-PAH群と比較して肺血管抵抗値が高く(5.7 Wood単位 vs. 1.1 Wood単位、p<0.001)、心係数は変わらなかった(5.0 l/min/m2 vs. 5.5 l/min/m2、p=0.579)。PAH群ではCPSS診断月齢が高く(74.5か月 vs. 6.0か月、p=0.005)、PAH群の25%はCPSS診断後にPAHを発症した。予後不明の1例を除き、PAHが改善した群(n=7; 閉鎖治療3例、肝移植3例、自然閉鎖1例)と非改善群(n=24; 閉鎖治療17例、肝移植3例、治療無し4例)を比較すると、改善群では治療前mPAPが全例40mmHg以下であり有意に低く(28.0 mmHg vs. 42.5 mmHg、p=0.020)、診断月齢は変わらなかった(49.0か月 vs. 74.5か月、p=0.808)。PAH非改善群のうち3例がPAHによる右心不全のため死亡した。
【結論】PAH群は白血球数と血小板数が低値であり脾機能亢進が示唆された。また、診断年齢と肺血管抵抗値が高かった。PAH改善例は治療前のmPAP≦40mmHgであり、肺血管病変が進行する前にCPSSを治療する事でPAHの予後を改善できる可能性が示唆された。