講演情報

[I-PD5-4]造血幹細胞移植に関連する肺高血圧症:病態と管理

加藤 太一1, 深澤 佳絵1, 山本 英範1, 郷 清貴1, 森本 美仁1, 鈴木 謙太郎1, 高橋 義行2, 大橋 直樹1 (1.名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター 小児科, 2.名古屋大学小児科)
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キーワード:

肺高血圧症、肺静脈閉塞症、造血幹細胞移植

血液疾患に関連した肺高血圧症は肺動脈性肺高血圧症と肺静脈閉塞症(PVOD)とがその原因として挙げられるが、両者は混在する場合があり、時に治療に難渋する。機序としては完全には解明されていないが現在のところ、抗がん剤や放射線の細胞障害性、同種免疫反応、感染症による高サイトカイン血症などの要因が血管内皮障害をおこし、肺高血圧症を発症すると考えられている。また、PVODは、シクロフォスファミドやブスルファン等のアルキル化剤や放射線の照射との関連が報告されている。既報では造血幹細胞移植後肺高血圧症の頻度については2.5~6%との報告がなされているが、軽症例などが見逃されている可能性は否定できない。我々の施設においてはこれまで造血幹細胞移植後の肺高血圧症は4例に見られた。うち3例は治療により改善したが、1例は初期に肺高血圧治療薬に反応したものの、徐々に反応不良となり最終的に死亡した。この症例では病理解剖にてPVODの存在が認められた。造血幹細胞移植後は感染症や間質性肺炎などの様々な呼吸器疾患の合併があり、肺高血圧症を臨床症状から疑うのはやや困難を伴う。今後は症例の蓄積を介してこうした造血幹細胞移植後の肺高血圧症の管理についての確立が期待される。