講演情報

[I-PD5-5]フォンタン術後遠隔期の肺血管拡張薬中止の影響

齋木 宏文, 松尾 悠, 工藤 諒, 西村 和佳乃, 齋藤 寛治, 佐藤 啓, 滝沢 友里恵, 桑田 聖子, 中野 智, 小山 耕太郎 (岩手医科大学 小児科学講座 小児循環器分野)
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キーワード:

フォンタン、肺高血圧、遠隔期

背景:フォンタン手術適応の拡大は肺血管拡張薬が寄与した部分も大きい。急性期には早期循環適応に貢献するが、遠隔期には側副血管増加との関連を指摘する検討もあり、その位置づけは明らかでない。当院では遠隔期以降に肺動脈圧低下を確認した場合には積極的に投薬中止を試みてきた。肺血管拡張薬を遠隔期に中止する影響について解析した。方法:当院管理中のフォンタン術後116例のうち、術後遠隔期(10年)で経過観察の心臓カテーテル検査を行った症例は85例である. このうち術後中期まで肺血管拡張薬使用があった25例と肺血管拡張薬使用のない60例の臨床経過を比較検討した。結果:遠隔期の中止例に合併症によるものはなかった。術後中期 (8.0±6.2歳)の肺血管拡張薬使用例・非使用例の心拍出量、中心静脈圧、経肺圧較差、酸素飽和度に差がなかったが、術後遠隔期 (13.2±6.8歳)では肺血管拡張薬使用例で中心静脈圧(13.3±1.5, 11.5±1.2 mmHg, p<0.001)、肝静脈楔入圧(p=0.024)、心拍数(p=0.013)が高く、酸素飽和度(89±4, 92±3%, p<0.001)が低かった。中期の肺血管拡張薬非使用例のうち、遠隔期に肺血管抵抗が上昇した症例は17例(28%)であったのに対し、肺血管拡張薬使用例で成長に伴い増量しなかった、または中止した症例では23例中18例 (78%)が増悪した(p<0.01)。遠隔期症例のうち成人期 (20.8±3.8歳)までのデータを追加解析すると、同様に肺血管抵抗(2.5±0.7, 1.5±0.6 mmHg, p=0.002)が高く、酸素飽和度(90±4, 92±3%, p=0.043)が低い傾向を認めた。結論:肺血管拡張薬使用例では肺動脈圧、肺血管抵抗に基づいて中期的に良好であっても、肺血管拡張薬を減量・中止した症例では遠隔期に肺循環の増悪を認めており、成長に伴って相対的に減量または中止した症例は慎重に経過観察する必要がある。