講演情報
[I-PL-1]小児循環器診療・研究・社会活動へのGlocalな取り組み:自験例から、小児血管医学、ビッグデータ・AI研究を通じて
○三谷 義英 (Perinatal Care Center, Mie University Hospital, Mie University Hospital, Mie University Graduate School of Medicine)
キーワード:
小児血管医学、Big Data、AI
振り返れば、研修医時代の症例を契機に、肺高血圧(PH)や川崎病(KD)冠動脈後遺症に関心を持ち、小児血管医学の基礎・臨床・社会医学研究に取り組んで35年が過ぎた。さらに、左心低形成症候群(HLHS)の治療や院外心停止防止に取り組み、学校心臓検診におけるビッグデータ・AI解析、および移行医療・学校検診の研究と提言にも関わっている。本講演では、症例に端を発し、小児血管医学やBig Data・AI解析を通じた我々のGlocalな取り組み(globalな視点での地域活動)を報告する。1990年当時、PHの有効な治療薬はなく、KD冠後遺症の成人移行の概念が未確立であった。当時、黎明期にあった血管生物学に興味を持ち、NO前駆物質によるPH治療研究(Circulation1997)やKD後の内皮障害研究(Circulation1997)を行い、前者で学位を取得した。その後、トロント小児病院のRabinovitch教授の研究室に留学し、NOによる転写制御(FASEB J2000)を研究した。これらは現在までPHとKD研究をライフワークとする礎となった。留学後は、当時、手術生存が厳しかったHLHSに対するbPAB後のNorwood/Glenn手術の4成功例(JTCVS 2007)を報告し、成績向上に寄与した。2008年、児童生徒の院外心停止へのAEDによる蘇生例に出会って強い衝撃を受けた。その経験からUtsteinデータを解析し、AEDの有用性を報告し(Europace2013)、学校心臓検診のガイドライン改訂に関わった。それを契機にビッグデータ解析と引き続きAI研究に取り組んできた。最近は、PHの早期診断の学校心臓検診活用(AJRCCM 2019)、胸部X線・心電図のAI判読(JAMA Cardiol2020)、ACHD・KD後成人のDPCデータ解析(投稿中)を進めている。さらに地域での経験から、国内では移行期医療や学校検診デジタル化の提言を発信し、国際的にはAHAのKD診療Statement(Circulation2024)や心臓性突然死防止のFDA Think Tank(Am Heart J2025)に参画してきた。本講演が、若手研究者の活動の一助になれば幸いである。