講演情報

[I-PPD1-1]小児期に発症する不整脈疾患の移行期医療の課題

吉田 葉子 (大阪市立総合医療センター 小児循環器・不整脈内科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

先天性QT延長症候群、移行期医療、不整脈

小児期に発症する不整脈疾患は、1.遺伝性疾患に伴う不整脈(心臓イオンチャネル病や心筋症)、2.心臓構造異常に伴う不整脈(先天性心疾患に合併する不整脈)、3.その他(心筋炎後や自己免疫性房室ブロック)に大別される。このうち2.は成人先天性心疾患の診療に含まれるため、ここでは1.における移行期医療の課題を述べる。先天性QT延長症候群(LQTS)を例にとると、本疾患は小児期・思春期に診断のピークを迎えるが、以降も失神や致死性不整脈の発症リスクは持続する。移行期医療においては、年齢や性差によるリスク変動に応じた管理戦略、薬物療法アドヒアランス支援、ライフスタイル指導、遺伝学的再評価や家族スクリーニングが求められる。医療提供体制の面では、不整脈専門医は循環器専門医を基盤とする医師数は小児循環器専門医を基盤とする医師数よりはるかに多く、アブレーションやデバイス治療に長けるが、小児と成人では対象疾患に違いがあり、専門医間に知識と経験のギャップが存在する。また、小児慢性特定疾病制度では16の不整脈疾患が対象であるが、成人の指定難病制度には不整脈疾患が含まれていない。こうした支援体制の変化や制度上の断絶も、移行期医療の障壁となる。移行期医療の充実は、小児期発症不整脈疾患患者の長期予後改善に直結すると考えられる。