講演情報
[I-PSY1-1]心臓病者のライフステージにおける願いと社会保障制度の課題~生活実態アンケート調査2023から~
○下堂前 亨 (一般社団法人全国心臓病の子どもを守る会)
キーワード:
生活、福祉、社会保障
全国心臓病の子どもを守る会は小児期に発症した心疾患の患者と家族の会である。1963年の設立当初は、適切な治療を受けられるような経済的負担や不安の軽減といったことが中心的な課題であった。その後、医療体制と公的医療保険、公的医療費助成の法整備などが進んだことで、会の取り組む課題は、学校生活、就労、経済的自立といった生活面での課題へと多岐に広まっている。2023年に心臓病児者と家族のための福祉・社会保障制度が十分に機能しているのかを知るために、全会員を対象に生活実態アンケート調査を厚労科研研究班(研究代表者・檜垣高史)からの協力を得て行った。アンケートには581件の回答を得た。その結果、アンケートの自由記述欄「不安に思っていること」からは、ライフステージの節目ごとの課題が明らかになった。○乳幼児期:治療の選択、医療費、治療生活と親の就労の両立への不安が多く寄せられた。また、「学校に通えるのか」「どの学校を選択するのか」といった就学についての課題が見受けられた。○学齢期:進学や働くといったことへの不安を抱えている様子がうかがえた。また、成人後の通院先の検討、医療費への公的助成が途切れることへの不安もあった。○成人期:就労や経済的不安の声が多く見受けられた。30歳代以降は、低下する体力と体調への不安、それにともなう就労の問題が訴えられている。○すべての世代を通じて:体調と医療費への不安は生涯にわたっていた。また、経済的な問題や先の生活への不安を常に抱き生活を送っている様子がわかった。先天性心疾患患者が安心して生活が送れるように、小児から成人への切れ目のない福祉と社会保障制度の充実が望まれている。そのための、具体的な法制度等の改善に向けた患者・家族の願いを述べていきたい。