講演情報

[I-PSY1-2]成育・循環器病対策基本法の成立:小児(成育)循環器医療への実装に向けて

山岸 敬幸 (東京都立小児総合医療センター)
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キーワード:

先天性心疾患、成人先天性心疾患、移行医療

2018年に成立した成育基本法、ならびに2019年の循環器病対策基本法は、ライフステージに応じて一貫した医療体制の構築を目指し、先天性心疾患を含む小児(成育)循環器疾患のシームレスな包括的支援を国の責務と位置付けている。こうした法整備を受け、全国的に小児・成人先天性心疾患の診療体制の整備が進められ、多くの課題が明らかになっている。 第一に、患者・家族の生活支援や医療・教育・福祉を統合的に支える「総合支援センター」における本領域の整備と機能強化が急務である。診療と社会的支援の橋渡しとなるこの機能は、特に慢性経過をたどり、成人期への移行が必要な小児(成育)循環器疾患において不可欠である。 第二に、先天性心疾患の手術施設の集約化(地域拠点化)を進めるうえでは、医療の質向上と同時に各地域に特有の事情への配慮が求められる。外科治療の集約化は、経験の蓄積やチーム医療の強化に寄与する一方、連携医療機関の役割や紹介体制の再構築、および次世代の育成が課題となる。 第三に、成人期への円滑な移行医療を進めるうえで、小児科と成人科の連携は未だ十分とはいえず、専門医の育成や制度設計、患者・家族への啓発が必要である。特に、思春期・若年成人期における移行医療では、医療途絶のリスクが高く、継続的管理体制の充実と共に、ドロップアウト症例に対する循環器内科医の一層の対応が求められる時代になる。 今後、すべての小児(成育)循環器疾患患者が安心して医療を受けられる社会の実現のために、法律を現場の実効性ある施策に落とし込むと同時に、診療・支援・教育の一体的な連携体制の整備が必要である。