講演情報
[I-SY1-1]術後横隔神経麻痺の予後と横隔膜縫縮術の効果
○藤田 周平1, 小田 晋一郎2, 川尻 英長2, 小林 卓馬2, 本宮 久之1, 夫 悠1, 後藤 泰孝1, 佐圓 海渡1, 山岸 正明1 (1.京都府立医科大学 小児心臓血管外科, 2.京都府立医科大学 心臓血管外科)
キーワード:
術後合併症、横隔神経麻痺、人工呼吸
【目的】先天性心疾患術後の横隔神経麻痺(DP)は人工呼吸時間の遷延のみならず予後にも影響する重要な合併症である。【対象と方法】2014年から2024年に先天性心疾患術後にDPを発症した症例を対象とした。超音波検査または透視によって確定診断し、運動様式に従って減弱、固定、奇異性に分類した。【結果】同期間の開心術は合計1443例あり、うち88例(6.1%)が術後にDPと診断された。男児が47例(53%)、月齢中央値9.4(3.0-22.9)、体重中央値6.4(3.9-9.3)kg。二心室循環が55例(63%)、単心室循環が33例(37%)で、術式別には大動脈弓再建術15例、グレン手術12例、シャント手術8例、Norwood手術6例、TCPC 6例、側開胸ASD閉鎖術6例などが多く、再開胸手術は63例(72%)であった。患側は右37例、左44例、両側7例であり、計95の横隔膜で減弱7例、固定 50例、奇異性38例であった。抜管困難(12例)、再挿管(25例)、NPPV離脱困難などを理由に術後17日(中央値)で39例(44%)に対し縫縮術が行われた。手術時低体重(OR0.695, p<0.0001)、奇異性運動(OR6.59, p=0.0006)で縫縮を要する傾向があった。縫縮術翌日に25例(64%)が抜管可能で中央値1日(IQR 1-2.5日)であった。DP中の14例で新規に胃食道逆流(GER)を発症し、胃と同側のDPにおいて胃対側より有意に多かった(25.5 vs 2.7%, p=0.004)。12例でHis角は鈍角化し平均111±21度であった。観察期間中央値62ヶ月中に7例が死亡し、10年生存率は90.6%であった。フォローアップできた83の横隔膜のうち69(78%)は機能回復が確認され、回復にかかる時間は中央値4ヶ月であった。【結論】術後DPは抜管困難や再挿管のリスクになるが、系統化されたスクリーニングと重症度評価を用い早期の縫縮術を行うことで挿管期間を最小化できる。縫縮の有無に関わらず多くの症例で横隔膜機能は回復する。胃と同側の麻痺ではHis角の鈍角化や食道裂孔脆弱によるGERの合併に注意を要する。