講演情報
[I-SY1-2]新生児・乳児における緊急ECMOの成績
○柴垣 圭佑, 富永 佑児, 今井 健太, 小森 元貴, 中溝 雅也, 盤井 成光 (国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
キーワード:
ECMO、新生児・乳児、低酸素脳症
【緒言】小児心疾患患者におけるECMO使用の報告は散見されるが、新生児・乳児期のECMOに関する報告は少ない。今回、当院での新生児・乳児に対する緊急ECMOの成績を検討した。【方法】2010年から2024年の間に当院でECMOを導入した1歳未満の59例を対象。術中人工心肺離脱困難例、手術補助使用症例、心筋症に対する補助人工心臓への橋渡し例は除いた。ECMO導入時の月齢、体重の中央値は1.6ヶ月、3.2kgであった。新生児は18例(31%)、先天性心疾患例は54例(92%)、うち単心室は38例(64%)。ECMO導入理由は心肺停止41例(70%)、術後心不全9例(15%)、呼吸不全9例(15%)、ECMO導入前に心肺蘇生を要した症例は40例(68%)、蘇生時間の中央値は36分であった。体格の小さな小児に対して迅速にECMO導入できるように低充填量回路を併用し、低充填量回路は45例(76%)で使用した。Primary endpointは生存率とした。また死亡危険因子解析、心肺蘇生患者の解析を行った。【結果】ECMO装着時間の中央値は119時間。ECMO離脱可能例は42例(71%)で、生存退院は33例(56%)であった。院内死亡は26例(44%)、うちECMO離脱困難例は17例、離脱後死亡例は9例。院内死亡原因は心不全14、呼吸不全3、敗血症6、その他3例。合併症は脳梗塞/出血11、脳以外の出血6、感染9、腎機能障害18例であった。30日、60日、180日生存率は76%、58%、54%であった。死亡の危険因子として、脳以外の出血(HR 7.28[2.5-20.9], p=0.001)が挙げられた。心肺蘇生を要した症例で、蘇生時間が36分以上だった場合、低酸素脳症の割合が有意に高かった(8例[40%] vs. 1例[5%], p=0.008)。低酸素脳症を発症した症例では7例が生存、そのうち3例(43%)に脳性麻痺が発症し4例(57%)は経腸栄養が必要であった。【結語】新生児、乳幼児期のECMOの成績は満足のいくものではなかった。成績改善のためには、出血の合併症を来さないことと蘇生時間を短縮する工夫が必要であると考えられる。