講演情報
[I-SY1-4]小児心臓外科手術後の難治性胸水に対する治療戦略
○末盛 智彦1, 源川 結1, 柳沼 和史1, 原村 陽子1, 永野 達也1, 佐藤 智幸1, 多賀 直行1, 竹内 護2 (1.自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児手術・集中治療部, 2.自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座)
キーワード:
難治性胸水、乳び胸、集中治療
小児心臓外科手術後の難治性胸水は、呼吸障害、体液喪失、栄養不良、免疫機能低下などを招き、時に致死的となりうる重大な合併症である。その発症機序には未解明な点が多いが、術後の炎症反応による血管透過性の亢進、Fontan循環に伴う静脈圧上昇、乳び胸の発生などが関与すると考えられている。難治性胸水の管理には、水分制限、利尿薬、後負荷軽減、抗凝固療法などを主体とするプロトコールが試みられてきた。また、乳び胸に対しては、絶食、MCT(medium chain triglyceride)食、ステロイド、オクトレオチドなどの保存的治療が行われ、治療抵抗性の場合には胸管結紮術などの外科的治療が適応されることが多い。近年、リンパ管イメージング技術の発展により、乳び胸の病態理解が進展し、その発生機序として外傷性胸管リーク(traumatic leak from a thoracic duct)、肺リンパ管灌流症候群(pulmonary lymphatic perfusion syndrome: PLPS)、中枢性リンパ流障害(central lymphatic flow disorder: CLFD)などが想定されている。PLPSやCLFDに対しては、リンパ管造影やリンパ管塞栓術などのinterventional radiology(IVR)を用いた診断および治療が発展しつつある。しかしながら、IVRによる治療を施行できる施設は限られており、難治性胸水の管理に関するガイドラインは未だ確立していないのが現状である。本発表では、当院における治療経験と最新の文献的考察を基に、小児心臓外科手術後の難治性胸水に対する治療戦略について検討する。