講演情報

[I-SY2-2]Ross手術

和田 直樹, 高橋 幸弘, 小森 悠矢, 松沢 拓弥 (榊原記念病院 心臓血管外科)
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キーワード:

Ross、Autograft、大動脈弁

【はじめに】Ross手術はサイズや耐久性の問題から人工弁置換術、弁形成術が困難な小児はもとより、近年成人例においてもその遠隔期の良好な成績が報告され、我々先天性心疾患を扱う心臓外科医にとって重要な手術の一つである。当院でのRoss手術の対象は主に弁形成が困難で、弁輪拡大を行っても十分な大きさの人工弁置換が困難な乳児から幼児、挙児希望のある若年女性が中心で、5歳未満が約70%を占める。当院での標準的なRoss手術の手術手技を供覧する。【手術】胸骨正中切開で後に使用する自己心膜を採取しておく。大動脈、肺動脈周囲を剥離し人工心肺を確立、Autograftの採取は基本的には心停止下に行う。肺動脈を分岐部直下で離断、肺動脈弁と右室流出路を確認し直角鉗子で肺動脈弁下の右室自由壁切開線を確認。右室自由壁を切開しAutograftの採取にかかる。肺動脈弁輪から3~5mm離れたラインで心筋組織は主にメッツエンバウム剪刀で、脂肪組織は電気メスで切開する。中隔切離面の左側では左冠動脈中隔枝が走行するため十分に注意する。Autograftの採取が終了したら、心筋保護液を注入してAutograft採取部からの出血を確認、止血を行う。Autograft切離面に新鮮自己心膜を縫合被覆する。大動脈をSTJの5mm上方で切開離断し大動脈弁を切除、左右冠動脈の採取を行う。大動脈弁と肺動脈弁の口径差がなければAutograftの吻合に移る。5-0もしくは4-0 Polypropylene糸の連続縫合で。LCCのNadirから時計回り、反時計回りに数針パラシュート法で運針し、新鮮自己心膜ストリップを挟んで縫合する。最後に連続縫合での運針が難しくなるRCCの一部は結節縫合としている。左右冠動脈の吻合部位を確認し、puncherで作成したAutograft吻合口に6-0 Polypropylene糸で吻合する。Autograft末梢側と大動脈を吻合して遮断を解除、出血があれば止血を行う。右室流出路をあらかじめ作成しておいた3弁付きePTFE graftで再建し手術を終了する。