講演情報
[I-SY2-3]先天性弁尖異常を伴う大動脈弁に対する形成術
○坂本 喜三郎1, 伊藤 弘樹1, 廣瀬 圭一1, 太田 教隆1, 五十嵐 仁1, 中村 悠治1, 前田 登史1, 渡部 聖人1, 菅藤 禎三1, 猪飼 秋夫2 (1.静岡県立こども病院 心臓血管外科, 2.静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター 肺循環動態研究部)
キーワード:
大動脈弁、先天性異形成、形成術
小児期に大動脈弁形成術を行うといっても、様々な患者条件の重なりで治療方針が異なることは周知のことと思う。先天性心疾患を伴う小児とは言え、大動脈弁への容量負荷等が中心のFunctional Aortic Annulus(FAA) dilatationに伴う中央部大動脈弁逆流で“弁尖自体のサイズが体格相当以上あり、弁尖機能の低下が軽度”であれば、低年齢でなければ弁形成(FAAの縮小形成とAV free margin長の調整によるprolapse是正 +α)を選択するようになりつつあると考える。が、先天性の大動脈弁尖異常、特に低形成、癒合を伴う1尖弁、2尖弁を持つ小児に対する大動脈弁形成は、安定した成績を得るのが容易でなく、外科医や施設によって方針が様々である。しかも、自己心膜による弁尖延長または弁尖置換を伴う大動脈弁形成術は、自己心膜でサイズと形体を正常に近づけることは可能になりつつあるが、正常弁尖の機能(成長はもちろん、弁尖各部のdistensibilityの違いに伴う拡張期弁尖接合向上とValsalva洞内vortex flowの再現による血栓予防etc.)を再現することができない壁が立ちはだかる。この対応策として、作製する弁尖を大きめ、長めにして逆流予防のsafety marginを取ることになるが、大動脈弁が小さい低年齢群では開口部狭窄や冠動脈の問題を惹起しやすく、しかも成人と比して急速な組織劣化とFAAの成長に伴う急速な弁尖接合の低下etc.は現時点では回避困難である。上記の問題があることを理解したうえで、自己心膜による弁尖延長または弁尖置換を伴う大動脈弁形成術を基本選択肢として治療検討をすべき群と私が考えているのは、先天性の大動脈弁尖異常、特に低形成、癒合を伴う1尖弁、2尖弁を持つ新生児、乳児、弁輪拡大を活用しても弁置換の選択が困難な幼児である。今回は、動画を提示しながら、尖弁を自己心膜で延長形成、置換するときやFAAの形態調整をするときに私が意識していることを話させていただきます。