講演情報

[I-SY2-4]成人先天性心疾患領域の大動脈弓部に対する再手術

櫻井 一1,3, 山本 裕介1, 寺田 貴史1, 大橋 直樹2, 山本 英範2, 朱 逸清2, 鈴木 謙太郎2, 松本 一希2, 野中 利通3, 櫻井 寛久3, 六鹿 雅登1 (1.名古屋大学病院 小児循環器センター 心臓外科, 2.名古屋大学病院 小児循環器センター 小児科, 3.JCHO中京病院 心臓血管外科)
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キーワード:

成人先天性心疾患、大動脈、再手術

小児期に大動脈病変に対して手術を行った例の一部は成人期に再狭窄や拡張病変のため再手術が必要になる.もとの複合病変の合併・進行や,複数回手術による癒着のため,手術適応,手術戦略は様々な因子が絡み総合的な判断が必要となる.とくに弓部病変に対する再手術は正中か側開胸かというアプローチの問題,脳分離や上下半身分離体外循環などの補助手段の問題も加わり一層複雑になる. ここでは上行-遠位弓部置換を行った1例を中心に手術動画を供覧しつつ弓部手術を行った他の3例とあわせ手術戦略につき考察する.手術動画例は左室性単心室, DILV, ASに対しNorwood+BDGを経てTCPC-Fontan施行後の19歳男性.11歳でre-CoAに対し上行-下行大動非解剖学的バイパス術を施行したが,圧較差の増悪,AR, PS進行のため再手術を行った.前回のgraftを利用し胸骨正中切開のみで,脳・下半身とも循環停止なしで上行-遠位弓部置換, AVR, LPA置換を施行した.術後4日目に抜管し23日目に自宅退院となった.他の3例は,27歳女性.CoA-VSD, ASに対する修復,re-CoAパッチ拡大,Ross手術を経て下行大動脈の仮性瘤, AR, PSRの手術のため胸骨正中切開で,2分枝送血,下半身循環停止下に上行-遠位弓部置換, AVR, PA導管置換術を行った例.他の2例はともに大動脈弁上狭窄に伴う年長児例で,弓部狭窄に対し分枝2または3本送血下に弓部置換やパッチ拡大を行った.成人先天性心疾患領域の大動脈弓部手術では,成人の動脈硬化性病変に対する手術と異なり,以前の弓部手術介入のため上行-下行大動脈の前後距離が比較的短い例も多く,正中切開のみのアプローチで下行大動脈吻合が可能なことがあり選択肢の1つである.また,若年者が多く,弓部分枝の動脈硬化病変に伴う脳塞栓の危惧が少ないため,必要なら各分枝に送血管の直接挿入をできるだけ行い,時間的制約なく手術操作ができるようにしておくことが重要と考えている.